5月10日 地味だが深い山城・石垣人気

朝日新聞2019年5月8日23面:戦国ゲーム火付け役 2007年に始まった「日本100名城」(日本城郭協会選定)の全城制覇者が2800人を超えるなど、年々広がりをみせる「城ブーム」。そんな中で最近、城好きの間で注目を集めるのが、山上に建てられた「山城」と、城を囲む「石垣」だ。魅力を探った。
岡山県の中西部、430㍍の小松山の山上にある備中松山城(高梁市)。日本三大山城の一つと言われ、天守が現存する山城では日本一の標高を誇る。13年度に4万5千人だった入場者は16年度に10万人を突破。この10連休には計1万4千人が山道を歩いた。1日、愛知県から来た40代の会社員男性は、令和を記念して公開された二重櫓や曲輪などを見学したとご満悦。「まさに歴史の旅をしたという感じです」 山城が注目を集め始めたのは2000年代以降だ。
火付け役は、ヒットしたゲーム「戦国BASARA」と「戦国無双」という。日本城郭協会の加藤理文理事は「歴史好きの女性たちがキャラクターの長宗我部元親や石田三成、真田信繁(幸村)らをヒーローに見立て、彼らの住んでいた城に行くと多くが山城。そこから人気が広がった」。魅力の一つは眺望だ。スマホ向けアプリ「発見!ニッポン城めぐり」を運営するユーエム・サクシード社がGPSデータを解析した「お城ファンが実際に訪れた日本のお城ランキングトップ300」(18年度)で姫路城、松山城などが並ぶ中、上位20位に竹田城(9位、兵庫県朝来市)と備中松山城(11位)が入った。いずれも雲海などが見られる絶景ポイントでもある。もう一つの魅力は山歩きにある。書店には『歴史トレッキング 攻める山城50城』などの書籍が並ぶ。標高280㍍付近にある高松市の古代山城・屋嶋城には昨年度、約2万人が訪れた。きっかけは、市教育委員会が3年前に復元公開した7世紀の城門と城壁。「ふもとから歩いて30~40分。ハイキング感覚で歴史に触れられる」と担当者。
積み方から時代推測 一見地味だがファンを増やしているのが、石垣だ。徳川家康が引退後に大改修した駿府城(静岡市)で昨年、城と周辺施設を管理する事業者が石垣とその刻印に焦点をあてた探検ツアーを企画したところ、マニアックな内容にもかかわらず、60人以上が参加。阿波の蜂須賀、土佐の山内など全国の大名が競って築いた石垣や個々の石を2時間かけて見て回った。石に残る刻印は所有の印として大名の石工が刻んだものだ。当時の工事の割り当て図などと比較すると、どの大名のものか、ある程度推測できるという。もう一つ、石垣特有の魅力も。積み方や加工法から時代を推測することだ。古いのが自然石をそのまま積む「野面積」。時代が下ると、若干の加工を加えた石を積む「打込接ぎ」へと変化する。
昨年発掘が行われた杵築城(大分県杵築市)では、台山という丘から、工法が違う16世紀末~17世紀初めの石垣が出土し、「3時期にわたって構築されたとこがわかった」と杵築市教育委員会の吉田和彦主査。江戸東京博物館の斎藤慎一学芸員も「積み方の違いで改修箇所がわかるし、大きな石などの使い方からは、城主が権威づけのため、石垣のどこに力点を置いたかがわかる」という。こうした目利きのポイントは、駿府城のようなツアーのほか、市民向け講演会などでもしばしば紹介されるようになった。「石垣などに着目した城の鑑賞は訪問者を築城当時へとさかのぼらせ、その場に立ち会っているかのような感覚にしてくれる。歴史の楽しみ方が多彩になってきているのを感じます」と斎藤さんは言う。
城郭に詳しい滋賀県立大学の中井均教授の話 現在見ることができる著名な城の多くは往時の姿をとどめておらず、復元天守なども少なくない。これに対し、山城は不便な場所にあったため、全般に保存状態がよく、石垣も旧状をとどめていることが多い。いずれも「本物」であることに価値があるのではないか。

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