5月1日 時代を読む 浜矩子

東京新聞2019年4月28日5面:「今」はダメな消費税増税 消費税増税は今度こそ実施されるか。安倍首相の側近による突然の謎めいた発言で、やや様子が怪しくなっている。またもや、最終場面で増税見送りということになるのか。それを歓迎される向きは多いだろう。筆者も増税反対の市民ネットワークに名を連ねさせていただいている。ただ、筆者の反対は条件つきだ。「今」消費税が引き上げられることに反対している。この場合の「今」消費税が引き上げられることに反対している。この場合の「今」は時期的な意味での「今」ではない。今は時期が悪すぎる、というのではない。もう少し経済実態が改善しないとダメだ、といっているわけでもない。筆者がいう「今」とは、すなわち「安倍政権下において」という意味での「今」である。消費税を引き上げるという選択は、今の日本の財政事情を考えれば避けられないものだ。日本の財政が日本の国民のためにまともに機能するようになるためには、その収支状況の健全化が必須だ。もとより、ここにいたるまで事態を放置してきた政治の責任は大きい。厳しく糾弾されなければならない。だが、それはそれとして、日本国政府を国民のためにしっかりお役に立てる政府に変身させるには、何はともあれ、このとてつもない借金財政を立て直す必要がある。そのためには、消費税増税は止むを得ざる選択だ。
問題は、安倍政権が消費税増税をいう時、そこに以上のような認識が全く欠落しているということだ。彼らにとって、消費税増税は引継ぎを余儀なくされた課題だ。そのベースには、「社会保障と税の一体改革」に関する政権交代前の与野党合意がある。要は乗り気のしない置き土産だ。安倍首相は、「取り戻す」という表現が大好きだ。だが、国民のために有効に機能できる財政を取り戻すことは、彼の「取り戻したいことリスト」の中には含まれていない。この人が取り戻したいのは「強い日本」であり、「誇りある日本」だ。国民のためによりよく尽くせる日本ではない。それどこらか、ひっとすると、日本のためよりよく尽くせる臣民を取り戻そうとしているのかもしれない。そう思われてしまう。だから、「今」消費税増税が実施されることには警戒心を抱く。
政策を自らの野望のために私物化する。そんな政治が政権を掌握している。そんな時に、増収につながる方向での租税政策の変更を許すのは危険だ。現に、今回の消費税増税については、次第にその目的が読み替えられてきている。いまや、財政健全化のための増税という色彩はすっかり薄くなっている。教育無償化のための消費税増税。何やら、そのような雰囲気になってしまった。自分がやりたいことのための資金集め。税金をそのように解釈されたのでは、たまったものではない。だが、この解釈が前面に出てきたからこそ、消費税増税に関する安倍首相のやる気は強まった。そのようにみえる。ただ、それも政治的にリスクが大きいと踏めば、あっさり見送りに切替える。それっだけ自分たちの都合との関係でしか租税政策を考えていない。どうも、そういうことらしい。
いずれにせよ、この政権がまっとうな公僕意識の下で消費税増税を考えてきたとは、とうてい思えない。だからこそ「今」増税が行われることには反対する。安倍首相のお言葉を拝借するなら「今」が終わることを待ち望む。その時点で、世のため人のための消費税増税の環境と整う。(同志社大教授)

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