5月1日 オトナになった女子たちへ 益田ミリ

朝日新聞2018年4月27日29面:そこに自由があった お一人さま大歓迎、という看板に立ち止まる。歓迎されているのだから、入ってみようではないか。「一人です」受付で告げると、店員さんがてきぱきと伝票をカゴに入れ、「5番のお部屋にどうぞ」と言った。はじめての一人カラオケである。
その日、カラオケに行くつもりはまったくなかったのである。夕方、店の前を通ったとき、歌いたいなぁと、ふと思った。こそへ、「お一人さま大歓迎」の看板である。一人でカラオケって、ちょっと恥ずかしい。そう思っていたからチャレンジしたこともなかったけど、実際、恥ずかしいのは個室に入るまでであった。
個室のドアを閉める。そこにあったのは自由だった。どんな曲を、どんなふうに歌ってもよい。たんたんと歌っても、がなるように歌っても。よそゆきじゃない、素のカラオケだ。まずは、たてつづけにユーミンを3曲。大好きな「14番目の月」、「甘い予感」ときて、「翳りゆく部屋」。
それからキョンキョン。「半分少女」と「優しい雨」を歌い、スピッツの「楓」を熱唱。感想の間にどんどこ曲を予約し、どんどこ歌っていく。胸が空く、とはこういうことをいうのだなぁと感心する。人前で歌うのが苦手な人もいる。わたしは大丈夫なほうだけど、その気持ちはわからいでもない。ちなみに、わたしは子供のころからずーっと自己紹介が苦手。足も手もふるえ、心臓はバクバク・・。だからといって、人とのおしゃべりが苦手というわけでなく、「それとこれとは話が別」というのは誰にだtぅてあるもの。人前ではイヤだけと、歌うのは好きという人もいるだろう。「お一人さま大歓迎」はそんな人たちの味方でもあるはずだった。 5番の部屋の壁紙は、ギリシャの街の写真だった。雲一つない青空だ。その空を見上げながら歌う「少年時代」。どうしよう、楽しすぎる! 結局、一人で1時間半歌い、帰り道、てくてく歩きながら、まだ小声で歌っていたのであった。(イラストレーター)

 

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