4月9日 未来ノート 柔道 阿部一二三

朝日新聞2018年4月1日11面:涙の挫折が糧に 重圧プラスの力に変える 2014年11月8日、阿部一二三の名前が全国に知れ渡った。高校2年で出場した講道館杯で男子の史上最年少優勝。いがぐり頭の17歳が社会人や大学生を次々に投げ飛ばし、男子66㌔級で頂点に立った。ジュニアでは力が抜きんでていたが、シニアの大会はこれが初挑戦。兵庫・神港学園高校柔道部の信川厚監督(52)は振り返る。「なんぼ強くても、シニアでは通用せんと思っていたんです。ええ経験になればくらいの気持ちで出場させて、まさか勝とはね」。本人も周囲も驚きの快挙だった。
1カ月後には国際大会のグランドスラム東京を、日本の男子高校生で初めて制覇した。優勝インタビューでは「リオで優勝したい」と宣言。開幕まで2年を切っていたリオデジャネイロ五輪の代表争いに名乗りをあげた。破竹の勢いは、しかし、五輪の前年にくじかれる。
日本代表の座をつかむには優勝が条件だった15年11月の講道館杯。前年の覇者の高校3年に注目は集まったが、準々決勝で敗れて3位。経験したことがない重圧につぶされ、体が動かなかったという。リオ五輪への道が絶たれ、人目をはばからずに号泣した。「柔道人生で最大の挫折だった」。だが、切り替えには時間はかからなかった。「ここで負けてたまるかと思ったんです」。2020年東京五輪が大きなモチベーションになった。
「東京五輪は圧倒的な力で1番になる」と心に誓った。高校生活も残り数ヵ月で気が緩みそうな時期だったが、大阪府警の道場に通って稽古に取り組んだ。ある日、五輪がかかる重圧の中で戦った経験は今に生きている。「どんなに気持ちを抑え込んでも、人間だからプレッシャーを消すことは無理なんです」。だから、重圧を受け入れ、プラスの力に変えようという気構えになった。畳の上で決して乱れない強い心は、20歳になった一二三の強みでもある。(波戸健一)

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