4月9日 キャッシュレス 米で反発拡大

日本経済新聞2019年4月4日9面:低所得層に配慮 米国で買い物や飲食の代金支払いに現金を使わないキャッシュレス決済に反発する動きが広がってきた。一部に自治体はクレジットカードなどを持たない低所得者を排除しかねないとの懸念から、現金払いを残すよう義務付ける法律を制定した。同じ問題は北欧でも浮上している。金融と情報技術(IT)の融合で金融サービスの利便性が高まる一方、その恩恵を受けられない人も多い。金融排除の解消は官民挙げてキャッシュレス化を進める日本にも突きつけられる課題だ。
米東部ニュージャジー州は3月18日、小売店に対し、米ドルなど現金での支払いを受け付けることを義務化する法律を制定した。違反すれば、初犯の場合で最高2500㌦(約28万円)の罰金が科される。州単位で義務付けたのはマサチューセッツ州に次いで全米で2場bb目となる。 NYでも検討 こうした動きは全米に広がっている。市単位ではペンシルベニア州のフィラデルフィア市も2月末に同様の法律を制定した。ニューヨーク市やサンフランシスコ市でも支払いをキャッシュレスに限った店舗を禁止する法制度を検討している。
都市部ではクレジットカードやスマートフォン(スマホ)を使った決済しか使えない店舗が新興の飲食店が増えている。特に小規模で新興の飲食店がコスト削減や業務の効率化を理由に導入する例が多い。現金を受けとらなければ、売り上げを銀行に預けたり、釣り銭を準備したりする作業も省ける。会計の労力も削減できるし、強盗や窃盗のリスクも抑えられる。メリットは大きい。
一方、現金で払う頻度が高い低所得層が新しい金融サービスの恩恵を受けられずに排除されるとの声も出始めた。スマホなどのキャッシュレス決済の手段を持たないために、買い物や飲食の機会を奪われかねない。米連邦準備制度キャッシュプロダクト局によると、年間所得が2万5千㌦未満の低所得世帯では支払いに現金を使う比率が47%にのぼり、12万5千㌦以上の高所得世帯(24%)の2倍近い。米連邦預金保険公社(FDIC)によれば銀行口座を持たない世帯は6.5%あり多くが低所得層だ。低所得層は銀行口座などの金融サービスを利用するのに必要な信用や資金が乏しく、現金に依存せざるを得ない側面がある。ボストン大学の経済学者、ジェイ・ジグワスキー氏は「キャッシュレス化は経済の最下層の人々を除外することになる」と指摘する。富を持てるものと持たざるものの分断を助長しかねない。
効率化には必須 ただ現金払いを小売店に義務付ける自治体の動きにも異論も出る。ニューヨーク市でキャッシュレス決済しかできない飲食店を経営するレオ・クレマー氏はその1人。「キャッシュレス店舗」を禁止する法案に関する市議会の公聴会で「ネットやアプリを介した取引ではキャッシュレスが認められているのに、なぜ我々だけ異なる基準が適用されるか」と憤った。
クレマー氏の店では最低賃金以上の給料を従業員に払い、働きやすい環境を整えている。キャッシュレス化による業務効率化やコスト削減は従業員への待遇を高めるのに必須だと訴える。キャッシュレス店舗の禁止が拡大すれば、ネット通販の台頭で価格競争に苦戦する小売業にも逆風となりかねない。ペンシルベニア大学ウォートン校のイタイ・ゴールドスティン教授は法律の必要性に一定の理解を示した上で、「技術の発展に伴い現金以外の決済手段を持つ人が増え、こうした法制度が要らなくなることを期待したい」と話す。
 導入進める日本 災害対策に課題 キャッシュレス難民は世界共通の課題だ。スウェーデンでは国内銀行が電子決済手段の「スウィッシュ」を普及させ、現金流通高は国内総生産(GDP)比で1%程度と2000年代初めの4%超から低下した。その結果、現金を使えない店舗が増えて社会問題になった。中央銀行のリスクバンクが対応策として考案したのは、デジタル通貨「eクローナ」構想だ。国の信用力に支えられたデジタル通貨を普及させ、金融サービスを受けられない人々が発生する「金融排除」をなくすべく検討が進められている。日本も無縁ではない。18年9月に起きた北海道地震では大規模停電でキャッシュレス支払いが困難になった。現金決済が無くなっていれば、経済が打撃を受けかねなかった。日本はキャッシュレス比率が2割と他の先進国より低く、金融排除の議論は盛り上がっていないが、震災国家独自の視点も必要になりそうだ。東洋大学の川野祐司教授は「日本でキャッシュレス化が進んだ時に現金しか使えない人々がをどうするか必ず議論になる。日本でも前もって議論を進めるべきだ」と話す。(ニューヨーク=関根沙羅、高見浩輔)
 日本では考えにくい 瀧俊雄氏(マネーフォワード取締役兼Fintech研究所長)米国は治安が日本より悪く、現金をレジに置くと犯罪者に狙われるリスクが高いため現金が使えない店舗が増えた。日本の現金信仰を考えると米国と同様の問題が起こるとは考えにくい。米国ではクレジットカードや銀行口座を使えない人も多いが、日本には信用力に関係なく使える電子マネーがある。インクルーシブ(包摂的)に使えるキャッシュレスが使える環境がと整っていれば、制限をかける必要が無いのではないか。
一定の制限は必要 岩下直行氏(京都大学公共政策大学院教授)中国でも似たようなことが起きている。中国の中央銀行がアリペリやウィーチャットペイしか使えない店舗に現金を使えるように指導している。米中のように、貨幣が使えないと、金融包摂されない(金融サービスを使えない)人が払えなくなってしまう。制限をするのは公的機関として大切。日本でもそんな店舗が増えて困る利用者が出てくるのであれば制限は必要だ。ただ、キャッシュレス化しなくていいということではない。ある程度、効率化されてから考えられるべきだ。

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