4月8日てんでんこ 養殖のカキの春「2」一口オーナー

朝日新聞2018年3月31日3面:差し伸べられた支援の手。「ぜひ、そのお金を使わせてください」 「これはとんでもないことになった」東日本大震災の津波で三陸沿岸は、カキを養殖するためのいかだがほぼ全滅した。殻つきカキのネット通販会社「アイリンク」(仙台市)を営む斎藤浩昭(54)は頭を抱えた。当時は北海道から九州まで30カ所ほどのカキの産地と契約していたので、事業が揺らぐことはない。だが、現場をよく知っているだけに、全てをなくした漁師らの絶望感は手に取るようにわかった。どうすれば少しでも力になれるだろうか。
漁師とも連絡がつきにくい中、震災から2週間かけて作り出したのは、一口1万円のオーナー制度だった。いかだに必要なロープや木材などを調達し、養殖が再開できたあかつきはカキをオーナー側に届ける仕組みだ。オーナーへの応募は次々寄せられたが、被災地の漁師たちは4月に入っても避難所暮らしで、仕事どころではなかった。そんな中、取引先の一つ、宮城県気仙沼市の唐桑半島のカキ漁師、畠山政則(63)は家も無事だったと聞き、ゴールデンウィークの前に訪れた。
畠山は「養殖を始めたいが、何もない。お金もない」としょげていたが、斎藤はオーナー制度のことを話した。「三陸のカキはみんなの宝です」。20枚ほどの紙に印刷した約1千通の激励メッセージを見せると、畠山はほろほろと泣き出した。「ぜひ、そのお金を使わせてください」
2人は5月7日、50㌔以上離れた同県石巻市へ車で出かけた。津波に遭いながら奇跡的に無事だった種(子ども)ガキを買い付けると、漁師仲間と一緒に、またガレキが残る唐桑の海の中へロープをそろりと下した。三陸のカキ養殖再開の幕が上がった。オーナー制度は地元紙などに取り上げられたのをきっかけに、約3億1千万円が集まった。それらは383人のカキ養殖漁師の支援に使われることになるが、当時は思いもしない「助っ人」とつながることになった。
それは唐桑から帰ってきて間もないことにかかってきた1本の電話から始まった。受話器から外国人の流暢な日本語が聞こえてきた。「フランスでカキ漁師にお返しをするプロジェクトが立ち上がりましたでので、ぜひ、協力してほしい」。「お返しですか?」。斎藤は思わず聞き返した。(森治文)

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