4月7日 20代と考える財政

朝日新聞2019年4月1日7面:いびつな足し算から卒業を いま20代の人たちが働き盛りになるころ、国の予算はどのような姿になっているのか。内閣府が現行の制度を基にはじいた試算では、65歳以上の高齢者の割合が30%になる2028年度、歳出は約130兆円にふくらむ。名目で3%以上という楽観的な経済成長が続く前提でも、税収は歳出にまったく届かず、借金に頼ったままだ=グラフ。介護や医療などの社会保障費と借金の返済にあてる国債費が、歳出を押し上げる。
「遠い問題」に危機感 それでも、経済成長すれば税収は増え、借金など問題にならない、との見方がある。この春大学を卒業した栂野裕貴さん(22)は「高度成長もバブル景気も経験していない僕たちには、かなり疑わしい」と距離を置く。財界人や学識者でつくる日本アカデメイアが主催した、学生が政策提言を考える活動に参加した。4人の仲間と50回近く、財政について意見を交わした。当初考えたテーマは、教育の格差。情報への接し方や親の収入と進路の関係などを議論するうち、世代の間にも差があると知り、国の予算に着目した。将来の自分の年金はいまの大人より減り、医療費の負担も増えて、損をするのは自分たちなのか。ふだん友だちとも話さない「遠い問題」だった財政に、強い危機感を覚えた。
19年度の国の当初予算は、消費税率10%に向けた経済対策が増収分を上回ってあれこれ入り、高齢化による社会保障費の伸びとあわせて、初めて100兆円を超えた。栂野さんたちの提言書は、増税対策の一つ、キャッシュレス決済でのポイント還元の問題点をこう指摘する。「(政治家が)世論を過度に忖度するがゆえに、最終的には歳出の膨張及び財政危機の継続という結末をもたらす」
 持続可能なしくみに 限られた予算のなかでも、持続可能なしくみを。人口が減るからこそ、新たな発想で。ささやかだけれど、欠かせない一歩を踏み出そうとしている人もいる。「欲しい行政サービスを足し算していっても、いびつになるだけ。本当に必要なサービスを助け合いでできないか」地域おこしなどを手がけるNPO法人SETのメンバーで、大学院を終えて東京から岩手県陸前高田市に移り住む木村聡さん(25)は、こう考える。
住民が車を運転するついでにヒッチハイク形式で人を無料で運ぶ「地域交通」の提案を、市役所に投げかけている。規制など乗りこえるべき課題は多い。でも、長生きの時代こそ、外出にわざわざタクシーを呼ぶのはお金もかかるとおっくうになるのではなく、気軽に乗れる「交流を支える地域交通」が必要では、と考えた。提案で想定する地域と同じ、人口3千人規模の長野県下條村では、生活道路の舗装などを手がけるのは住民だ。役場は資材や重機の燃料代を用意する。その実践例を本で読み、背中を押されたことも大きかった。
将来へ視野を向けて 20代が生まれた1990年代、日本の人口は増えていた。00年代半ば以降に減り始め、高齢化率は、95年の14%から19年は28%へ上がる。社会保障費はこの20年ほどで倍増し、国の予算の3分の1を占める。税率3%で始まった消費税はいま8%だが、全体の税収は90年代を少し上回る程度だ。毎年出し続けている国債の残高は、900兆円近い。人口と税収が共に右肩上がりの時代は、とうに終わった。バブルが崩壊し、経済対策や高齢化で歳出が増え、受益と負担のバランスがとれなくなって、30年近くが過ぎた。富が分配される時代から、負担を分かち合う時代へ。そう変わらなければならなかったのに、変われないままだ。日本銀行の金融緩和政策で、いまのところは金利が低く抑えられ、国債費は急増しない。暮らしへのしわ寄せや財政への危機感は、持ちにくい。
でも、こうした状況がいつまでも続く保証はどこにもない。10年、20年先を視野に入れ、めざす社会像の議論を始めるときだ。欠かせぬ行政サービスと、それを支える税財政の姿を描く。おきらめる政策や負担増の検討も必要だ。「負担を次の世代へ先送りしない」と言うだけでは、済まない。目先の損得ばかりで政策の優先順位を決める先送りの政治は、もう終わりにしよう。

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