4月7日 論×論×論 

朝日新聞2019年3月31日37面:メディア 津田大介(ジャーナリスト)薬物依存報道 異論相次ぐ裏に 新井克弥「ピエール瀧薬物依存報道を伝えるメディアはインターネット依存症」(勝手にメディア社会論、3月17日) コカイン使用容疑で逮捕されたミュージシャン・俳優のピエール瀧容疑者をめぐっては、テレビやスポーツ紙の無数の報道が飛び交い、メディアスクラム状況になった。これに反発する動きが、ネット上を中心に出ている。家族社会学者の永田夏来は、評論家の萩上チキが専門家とともに作成した「薬物報道ガイドライン」を引きながら、ネット署名を立ち上げた。「排除や厳罰はむしろ逆効果」として、瀧容疑者の音源・映像を出荷停止したり、配信停止したりすることの撤回を求めている。3月29日現在で、6万2千筆を超える署名が集まった。
新井克弥は「ピエール瀧薬物依存報道を伝えるメディアはインターネット依存症」で、マスメディアがネットに依存する構造が、メディアスクラムを助長していると指弾する。瀧容疑者の逮捕を報じるメディアが「事実を適当に組み合わせ、クリーシェに沿って内容を盛って大騒ぎにしてしまう」というネット炎上の手順を用いることで、結果的にフェイクニュースのような効果をもたらしているというのだ。新井は瀧容疑者を報じるメディアなどに異論が相次いでいる状況について、昨今のメスメディアの苦境と表裏一体であると語る。「80年代、文系の大学生たちが憧れたのはメディアだった。しかし現在、メディアへの関心を強く持っている学生はかつてほど多くはない。こうしたパパラッチ的なやり方に、ちょっとウンザリしているみたいなのだ」という指摘は重い。(聞き手・編集委員村山 正司)

共生・社会 森千香子(一ツ橋准教授)「理解」共生に欠かせない視点 石戸論「ロバート キャンベルさんが語る『共感』の危うさ」(ハフポスト、3月14日) インタビュー「ロバートキャンベルさんが語る『共感』の危うさ」は、社会の多様化が進むなか、分断を乗り越えて共生を考える上で大切な視点を示す。日本文学研究者のキャンベル氏は、ブログで同性愛者であることを公表した。自らの体験を踏まえながら、共感によって「そうだよね」と思えない人たちとの間に「枠ができてしまう」。コミュニケーションが閉ざされていくことを、殻という言葉で表現し、トランプ政権下の米国を例に、共感が排除を生む出す危険性を明らかにした。相手の気持ちに思いをはせ、自分のことのように感じる「共感」は、日本でも肯定的に捉えられてきた。それだけに、共感できない人間の排除につながるとい負の側面の指摘は、私たちに発想の転換をせまる。ではどうすればいいのか。キャンベル氏は、共感の代わりに大切な概念として、ファクトにもとづいた理解をあげる。LGBTに共感できなくても、パートナーとして社会で生きていく上で必要な法制度がないことがおかしいという事実は理解できるはずだという。
私は、この指摘が、出入国管理法が改正され、これまで以上に外国人との共生が課題となる日本社会でも欠かせない視点だと考える。ただ、理解だけでは足りない。共感どころか理解できないような違いを持った人間にも、同じ社会で生きていく上で保障されるべき権利がある。共感できなくても等しい存在として扱う制度をどうつくるのかが問われている。(聞き手・高久潤)

憲法・社会 木村草太(首都大学東京教授) 意見くみ取る地方自治 道筋は 片山善博「公聴機能の回復が、地方自治健全化の第一歩だ」(世界4月号) 4月の統一地方選は、既に一部の選挙戦が始まっている。片山善博「公聴機能の回復が、地方自治健全化の第一歩だ」は、最重要分野のひとつである教育行政を例に、地方自治の機能不全を解決する道筋を示そうと試みる。通学時に背負うランドセルが重すぎる子どもの発育に悪影響を及ぼすのではとの声が保護者の間にあるなか、教科書や教材、学用品などを教室に置いて帰宅する「置き勉」を認めない学校も多い。文部科学省は昨年9月、児童生徒の携行品の重さや量を改めて検討するなど「必要に応じ適切な配慮」を求める通知を出した。鳥取県知事や総務相を務めた片山は、こうした身近な問題は本来、学校や市町村教育委員会が保護者や教師の意見を聞き、改善策を示せるとみる。文科省が通知を出したのは問題に対処しない学校や市町村教委が多いからだという。「地方自治の観点からはまことに情けない」と嘆く片山は、教員多忙化についても、例えば給食費の微収問題は市町村レベルで改善できるとみる。事故が多い組み体操の問題で同様だろう。
片山によれば、公立小中学校の「経営責任」は市町村教委にある。当事者の意見をくみ取る公聴機能を担うべき教育長や教育委員であり、人事案や教育関連の予算案を提出するのは市町村長、人事や予算を審議するのは市町村議会だという。では、教委や議会が問題解決に動くための改革を促す候補者は誰なのか。片山の重要な指摘を手がかりに、等閉視されがちな地方議員選挙にも注目したい。(聞き手・大内悟史)

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