4月7日 池上彰の新聞ななめ読み

朝日新聞2018年3月30日17面:「書き換え」か「改竄」か 選ぶ表現に姿勢が映る 朝日新聞の3月2日付朝刊1面トップは衝撃的でした。財務省が森友学園との国有地取引の際に作成した決裁文書が書き換えられているという疑惑を報じたからです。これ以降、新聞各紙は「朝日の報道によると」という表現を使いながら、この問題を報じました。ライバル紙が報じた特ダネを、報じた社の名前を出して引用するのは、潔いことです。ただし、朝日の名前を出した背後には「誤報だったら朝日の責任ですから」と言い逃れられるという意識があったように見えるのですが、考えすぎでしょうか。それはともかく3月12日になって財務省は文書の書き換えを認めました。翌13日の朝刊各紙の1面の表現は分かれました。
朝日の見出しは「財務省 公文書改ざん」、毎日は「森友14文書 改ざん」、東京の「森友14文書改ざん」でした。財務省の行為を「改ざん」と報じたのです。これに対し日経は「答弁に合わせ書き換え」、産経は「森友書き換え理財局指示」と、いずれも「書き換え」と報じています。読売の見出しは巧妙でした。「森友文書15㌻分削除」となっていて、見出しでは書き換えとも改ざんとも書いていないのです。ただ、本文を読むと「書き換え」の表現が使われています。さて、財務省の行為は「書き換え」なのか、「改ざん」なのか。この点で読ませる記事は毎日でした。14日付朝刊で、こう解説しています。
≪「改ざん」の意味について、どの国語辞書も<字句を書き直す>という基本の意味に、▽多く不当に改める場合に用いられる(広辞苑)▽普通、悪用する場合にいう(大辞林)▽多く自分の都合のいいように直す意(日本国語大辞典)-と否定的な説明を補う≫ ≪改ざんの「ざん(竄)は「穴」と「鼠」が合わさった字(会意文字)だ。大修館書店の「大漢語林」によると<ねずみ(鼠)が穴にかくれるさまから、一般に、かくれるの意味を表す>とある。漢和辞典編集者の円満字二郎さんは「鼠はもともとは『字句を直す』という中立的な意味だったが『ねずみが巣穴に隠れる』ところから生まれた漢字であり、中国の歴史書にも『こそこそ勝手に字句を直す』というニュアンスで使われているのが目立つ」と話す。実際、竄匿(ざんとく)や竄悪(ざんあく)など否定的な熟語が多い≫
なるほど、改竄の「竄」の字が常陽感じでないため、各紙は「改ざん」と表記。これでは悪質さが伝わって来ません。ただ産経は、13日の1面の見出しで「書き換え」という表現を使っていましたが、他誌の社説に当たる「主張」欄で、<都合の悪いことを隠すため、公文書をこっそりと書き換えるのは改竄というべきである>と書いています。改竄にはルビが振ってあります。この手法はいいですね。元の字がどんなものかわかります。
その後、産経は14日付朝刊で、記事の表記が「改竄」に統一されました。車内で意志統一が行われたのでしょうか。財務省が「書き換え」と発表したからといって、新聞社がそれに従う必要はありません。産経は朝日や毎日、東京に遅れたものの、財務省の行為を批判的に報じる姿勢が明確になりました。
一方、読売と日経は、その後も「書き換え」を使ってきましたが、安倍首相の答弁で表記が変わりました。3月26日の参院予算委員会で、安倍首相は<今回の書き換えについて、「改ざんという指摘を受けてもやむ得ないのではないか」との認識を示した>(読売夕刊1面)のです。その結果、翌27日付の朝刊1面で読売には<学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書の改ざん問題で>という表現が登場しました。日経も27日付朝刊2面で<決裁文書を財務省が改ざんした問題で>と書きました。
新聞社としての独自の判断をせずに財務省の発表通り「書き換え」と書き続け、安倍首相が認めた途端に「改ざん」と”買い直す”。新聞社として恥ずかしくはないですか。 ◇東京本社発行の最終版を基にしています。

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

ご予約・お問い合わせはお気軽に

Tel0120-740-276

〒352-0011 埼玉県新座市野火止8-14-29

ページトップへ戻る