4月6日てんでんこ 横丁最後の春「11」終幕

朝日新聞2018年3月29日3面:全国から励ましを受け、前を向いて頑張った。「仮設の横丁はよかった」 震災7年を2日後に控えた2018年3月9日朝。前夜から続く激しい雨で岩手県釜石市の市街が冠水した。津波に襲われた一帯は復興が進み、公民連携でできた新しい飲食街「かまりば」や複数の災害公営住宅ビルが並ぶ。そこにあふれた雨水は大人のすねの高さ。仮設飲食街から「かまりば」に移って再建した「呑ん兵衛横丁」出身のママらも憤った。
「またよ、何とかしてよ」 昨年秋の台風などでもたびたび、店の床上まで水があふれた。床に置いていたストーブなどが壊れた。一帯は震災前から大雨や高潮でよく冠水したエリアだった。津波で浸水した地に戻りたくないというバー経営の山崎健(49)ら仮設飲食街で営業を続ける経営者3人は16日、市役所2階の市長室で、野田武則市長に面会した。3人の中に横丁の「お恵」の菊池悠子(79)もいた。
仮設飲食街での営業延長を直訴したが、月末閉鎖は動かない。菊池は市長に不満をぶつけた。「横丁は釜石の文化。全体として守る姿勢を示してほしかった」3人は折衷案も提案した。仮設飲食街のうち、お恵などの入る棟だけをしばらく残して、今も残る店を集約する。家賃を払っても構わない。などと打診した。
それでも流れは変わらなかった。市長は、「退去期限は延ばせないが、再建の意志と可能性があれば寄り添って支援したい」と菊池らに伝えた。菊池は、震災翌年の12年3月、長年連れ添った夫成幸(当時72)をがんで亡くした。その3ヵ月前だった仮設での営業再開の日、被災前は1度しか店に来たことのない夫が接客を手伝ってくれた。そんな夫との別れも背負いながら横丁のリーダーを務めてきた。
鉄の街と歩んだ横丁。その歴史に幕を下ろすと24日、残る6軒で地元新聞にお別れの広告を出した。その終幕まであと2日ー。終わりを前に、大変だったか、と菊池に尋ねてみた。答えは意外だった。「よかった」全国から励ましを受け、前を向いて頑張った。それが続いただけ、と。 (山浦正敬)
「横丁最後の春」は終わります。次は第26シリーズ「養殖カキの春」を始めます。

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