4月5日 池上彰の新聞ななめ読み

朝日新聞2019年3月29日15面:英のEU離脱がもめる訳 節目ごとに詳しく説明を イギリスは欧州連合(EU)離脱をめぐって大混乱。「決められない政治」はイギリスでもあるのだと感慨深いのですが、なぜ混乱しているか理解に苦労している人も多いのではないでしょうか。こういうときこそ、じっくり活字で読みたいではありませんか。新聞は、そんな読者の期待に応えているのでしょうか。たとえば、3月23日の本紙朝刊は1面左肩に「EU、来月12日まで離脱延期」という記事があります。<欧州連合(EU)は21日夜(日本時間22日朝)、英国の離脱を当初の29日から、少なくとも4月12日まで延ばすことを首脳会議で決めた。メイ英首相が求めた6月30日までの延期は認めなかった。離脱議論が迷走する状況に各国首脳は業を煮やし、約3週間で英国に最終方針をはっきりさせるよう迫った>
EU首脳がイギリスの態度にいら立っている様子がわかります。さらに本文を読むと、こう書いています。<首脳会議では、英議会が3月29日までに協定案を承認する場合に限り、欧州議会選前日の5月22日までの離脱延期を認めた> 突然「協定案」という言葉が出てきます。これは離脱に伴う条件を英政府とEUとの間で決めたものですが、その説明が本文にありません。協定案の詳しい内容までここでは求めませんが、せめて「離脱方法を定めた協定案」程度の説明がほしいところです。 この日の朝刊は、2面で大きく離脱をめぐる動きを説明しています。これだけ長文なら何が問題かわかるだろうと期待するのですが、残念。離脱協定案が議会で採決できるかどうか不透明である経緯は書かれていますが、賛否が分かれる理由の説明がありません。
担当記者やデスクにしてみれば、以前に説明したことがあるからろいう判断なのでしょう。事実、3日前の3月20日の本紙13面に「協定案には、EUの関税ルールに英国が無期限に従い続けねばならなくなる規定がある。このためEUとの決別を望む保守党の強硬離脱派らが反発」と書いてあります。しかし、以前のことを覚えている読者ばかりではありません。20日の紙面でも、なぜEUの関税ルールに従い続けなければならないか説明しろとは言いませんが、節目ごとにきちんとした説明がほしいです。読者の思いに応えたのが3月22日付の毎日新聞朝刊8面です。1㌻を使って、イギリスがEUに加盟している経緯から離脱を決めた国民投票など歴史をまとめています。この特集では、協定案がもめる一番の理由を「アイルランドとの国境問題」だと説明しています。
<英国のEU離脱問題で最大の壁が、英領北アイルランドと地続きのEU加盟国アイルランドとの国境管理問題だ。問題がこじれれば、北アイルランド紛争で多数の犠牲者を出した対立の再熱につながりかねず、極めて取り扱いの難しい課題となっている> <離脱強硬派の多くが求めるのは、EUという関税同盟に入ることで失われた英国の関税自主権の回復だ。そのためにはアイルランドなどEU加盟国との間に厳格な国境管理が必要となってくる。ところがその場合、アイルランド島内の国境を自由に往来できるようにした、北アイルランド紛争の平和合意(ベルファスト合意)の根底が崩れる>
何が問題なのか、コンパクトにまとまっています。こういう配慮が必要なのです。ところが、残念なことに「北アイルランド紛争」についての解説が短すぎます。この紛争で3千人が犠牲となり、「親アイルランド派のプロテスタント系住民との間のわだかわまりは依然残る」とは書いていますが、多くの読者は北アイルランド紛争を知りません。記者は詳しいでしょうが、読者の多くはしらない。このギャップを埋めるように解説記事を書くように指示するのがデスクの役割なのです。 ◇東京本社発行の最終版を基にしています。

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