4月4日てんでんこ 電気のあした「14」県土再生

朝日新聞2019年3月29日3面:首都圏へ送電し続け、105年。福島の人々はついに送電網に割って入る。 2月25日、福島県浪江町で町道を掘り返す工事が進んでいた。道の端に掘られた溝に塩化ビニル樹脂の管を敷設する。福島から首都圏へ、自然エネルギーでつくった電気を送る「共用送電線」が、この管を通る。送電線の建設、運営を担うのは福島送電合同会社。福島県などが株主になっている発電会社の福島発電と、東京電力、地元の東邦銀行が出資し、2017年3月に設立した。
3ルート、総延長80㌔に及ぶ送電線につながる自然エネの発電所は、太陽光が計23万5千㌔ワット、風力が計38万㌔ワット。総事業費は約290億円。いまは太陽光が使う約50㌔を建設中で、年内に完成する。原発事故を経て、福島県は12年3月、40年に県内で使うエネルギー100%相当を自然エネでつくるビジョンを掲げた。翌4月に県エネルギー課長になった佐々木秀三(56)=現・県相双地方振興局長=は思った。「阿武隈山地の風力をひろいたい」。ビジョンの実現には、大規模な風力発電が必要だった。しかし、難題が立ちはだかる。県内は東電と東北電力の送電網に覆い尽くされ、自然エネの電気を自由に流せる送電線がない。全原発が止まり「空き家」になった東電の送電網を使えば大量の自然エネを受け入られるが、その送電網まで電気を流す送電線の建設には膨大な費用が必要だった。
県は国へ働きかけ、16年9月、送電線整備を国が補助する枠組みを勝ち取る。翌10月には東電とともに福島発電準備合同会社を設立し、県職員OBで福島発電社長の鈴木精一(63)がトップを兼務した。「発電事業者が集まらなければ送電線はできない」。鈴木は共用送電線に参加する事業者集めに奔走。共用送電線整備はその後、福島送電が引き継、18年2月、ついに着工した。
会津地域にある猪苗代湖。福島県で電気をつくって首都圏へ送る事業は1914年12月3日、ここで始まった。財閥関係者らが設立した発電会社の猪苗代水力電気が、猪苗代第一八電所、そして東京まで225㌔に及ぶ送電線をつくり、送電を始めた。戦後は東電の所有となり、いまも東京に電気を送る。それから105年。「首都圏の電力供給基地」となった県土を覆う東電、東北電の送電網に、共用送電線が割って入る。「県土再生です」と鈴木は言った。(上田俊英)

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