4月30日 フェイクニュース「5」

朝日新聞2019年4月26日夕刊9面:変わるメディア不信の先へ 「メディア不信」が世界各国に広がる中、「ジャーナリズムに対する信頼を何かと取り戻そう」と奮闘するジャーナリスト出身の研究者が米国ニューヨークにいる。フェイクニュースがこれほどまでに氾濫する背景の一つに、既存のメディアに対する人々の信頼低下があるのではないか。そんな指摘を真摯に受けとめているからだ。
ニューヨーク。マンハッタンからほど近い一角。多くの人が行き交う雑踏の中に立つニューヨーク市立大学大学院ジャーナリズム学科に、同大学院教授のジェフ・ジャービス(64)を訪ねた。あいさつもそこそこに「ジャーナリズムは変らなければなりません」とジャービスは力説した。「これまではジャーナリズムもあるところに人々が来るのが当然だと思っていた。でもこれからは人々がネットで『会話』をしている中に、SNSで誰でもシェアできる体裁を整えたニュースを発信して飛び込んでいくべきです」
ジャービスがそう考えるようになったきっかけは、2001年9月11日に米国で起き、世界を震撼させた同時多発テロだ。ハイジャックされた飛行機が世界貿易センタービルに激突した時、ジャービスはその方向に向かう電車に乗っていた。「衝撃を受けた私はブログを始めましたが、それを読んだロサンゼルスの人が感想を書き込み、私も答えるというキャッチボールをするうちに、そうか、ジャーナリズムにはこうした読者との『会話』がもっと必要なんだと気がつきました」そうした考えを実践するため、フェイスブックなどのプラットフォーム企業からフェイクニュースを締め出していく試みを始め、ジャービスは数々のプロジェクトを主導しながら、ビジネスとしても成立する「新たなジャーナリズムのスタイル」を何とか確立させようと日々格闘を続けている。
サンフランシスコで会ったジャーナリストでサンタクララ大学のサリー・ラーマン(59)は、報道機関の倫理基準や執筆者の経歴など、「この記事は本当に信頼できるの?」と読み手が検討する際に参考となるような八の指針を実行するニュースサイトなどに対し、「信頼(Trust)」を意味する「T」マークを与える「信頼」構築プロジェクトを進めている。「様々なメディアと組織の枠を超えて作ったプロジェクトに誇りを感じる」とラーマンは語る。またオランダ発のメディア「コレスポンデント」は、ニュースの速報競争から離れ、深い解説を重視しながら読者に取材過程も公開するなどの新たな試みを始めた。同社のジェシカ・ベスト(31)は「従来のジャーナリズムに飽き飽きしてきた人たちが、読者参加型の私たちと共に戦ってくれることでジャーナリズムを変革していけたらうれしい」と話している。 =敬称略(おわり) (松本一弥)

 

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