4月28日 「サザエさん」一家 世は変われど

朝日新聞2019年4月25日31面:日曜日夕方に放送されているアニメ「サザエさん」(フジテレビ系)が今年、放送50周年を迎える。半世紀の間に実社会では家族のかたちは大きく変わり、3世代同居家族の日常を描く国民的アニメの見方に反映される価値観も多様になってきた。
3世代7人アニメ50周年 「『春眠暁を覚えず』だな」。朝から家族7人でちゃぶ台を囲むと、波平は眠そうなカツオとワカメに声をかける。7日に放送された全3話中の1話。眠れないマスオのために家族が工夫する様子を軸に、居眠りをするサザエやフネの様子を描き、「眠さ」だけをテーマに約7分の物語が構成されていた。漫画研究家の清水勲さん(79)はアニメの長寿の理由を「家族の中に幼児から会社員までの広い年代が出てくるので、見る人が誰かしら共感でき、飽きがこないから」と分析する。一方で、「原作とアニメは別物だ」とも指摘する。「時事ニュースを反映して風刺が利いていた原作とは違い、アニメは現代の小学生も楽しめるホームドラマ。時代の受け手に合わせて変わっていく作品だ」実は、放送開始時は「トムとジェリー」をほうふつさせるようなドタバタ劇だったという。サザエさんの製作会社「エイケン」の田中洋一プロデューサー(57)は「当時のプロデューサーが家庭内のちょっとした出来事を膨らませた家族向けの作品に方向転換したことで、視聴者に受け入れられた」。制作チームには「はやりに乗るな」という言葉が伝わる。家族を描くという軸がぶれないように、という意味がある。
エイケンでは、その回の軸となる登場人物や季節のテーマを脚本家に伝え、関連する7本程度の原作を渡す。脚本家はその中から1本以上を取り込み、オリジナルの話を作る。1回使った原作は、その後2年は使わない。脚本は、番組開始から携わる2人を含めた計9人で担当している。弁組は1979年に最高視聴率39.4%を記録。2018年の最高視聴率は12月2日の15.2%、平均視聴率は11.9%だった(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。
 多様化時代 憧れも違和感も 「家族愛にあふれているイメージ」に合う漫画・アニメのキャラクターについてジブラルタ生命が既婚男女(20~69歳)を対象に行った18年の調査では、女性キャラクターの1位はサザエ、男性キャラクターはマスオだった。憲法改正を掲げる運動団体の日本会議が運動への活用を勧めるブックレット『女子の集まる 憲法おしゃべりカフェ』では、「家族保護条項」の穿設を求める流れの中で、「サザエさんのような家族が増えるといいわね」としている。一方、ネット上には「家族観をそろそろ変えるべきだ」「実世界と乖離した時代劇アニメ」などの声も上がる。フネとサザエの2人の専業主婦がいる設定は、社会の流れと乖離がある。労働政策研究・研修機構によると、80年に1114万世帯だった専業主婦世帯は、18年には約半数の600万世帯に。共働き世帯は約2倍になった。兵庫教育大学大学院の永田夏来講師(家族社会学)は「『家族はしんどい』ということが共有され、家族の形も多様化している時代だからこそ、『どこかにこういう安心できる環境があるんじゃないか』という憧れを感じる人は少なくないか」とみる。その上で「アニメは、いつの物語なのか分からない。『日本人は仲が良くて優しい』と美化した『現代から見た昭和』であることを分かっていないと、『家族はこうあるべき』という教条的な考えにつながる危うさがある」と懸念する。フジの渡辺恒也プロデューサー(37)は「サザエさんがおっちょこちょいだったり、カツオが宿題をやらなかったりと、決して『完全な家族』ではない。家族の面白さやかっこ悪い部分、人の持つユーモアを制作陣は大事にして作り続けてきた」。作品の家族観についての指摘があることについてはこう答える。「アニメ作品なので、教科書ではない。サザエさんという『ある家庭』の物語です」(湊彬子)

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