4月27日 政治家の失言 被災地から思う

朝日新聞2019年4月24日25面:桜田義孝前五輪相が今月更迭され、「(東日本大震災の)被災者の皆さんを傷つけるような発言」をしたとして謝罪しました。しかし発言の、何がどのように被災者を傷つけたかは、語られていません。被災地で暮らす2人の識者に聞くと、他人事のまま「失言」が繰り返される現実を、もどかしい思い出見ていました。
責めて終えずに将来の議論を 大槌新聞発行人 菊池由貴子さん きくち・ゆきこ1974年、岩手県大槌町生まれ。東日本大震災の翌年から、同町で地域紙「大槌新聞」を月4回発行し、全戸配布。今も1人で取材、編集を続ける。 桜田さんは発言を謝罪したでようですが、「復興より選挙」は本音でしょうから別に謝らなくてもいいのにと思います。口に出すか出さないかの差だけで、歴代の復興大臣が繰り返してきた言動と同様、多くの政治家の本音だと思っているので、今さら驚きはありませんでした。
ニュースを見ていると、県民が発言に対し「不快です」「憤りを覚えます」と答えていますが、実際は、もう期待していないので落ち込みもしない、といったところではないでしょうか。だって、この町では今も仮設住宅住まいの人があり、よくやく、高台移転した住宅団地の造成が終わったところですよ? 工期が遅れた理由は人手や資材不足だと言われ続けてきましたが、東京では五輪施設が急ピッチ建設中のようです。そもそも東京だけで自力で五輪がやれるのになぜ「復興五輪」と言われているのか今でも不思議です。
私は、一瞬にして2万人ものひとが犠牲になった震災から何かを学んでほしい。同じ思いをしてほしくありません。そもそも復興って何だと思われますか。津波で流された家や店、道路が元に戻るには「復旧」で、他の市町村の人にとってはそれほど大事じゃないのはわかります。でも、震災後、被災地には増税までして巨額の公金がつぎ込まれた。その投資が、いずれ自分のところにも還元されると思える「復興」なら、全国の人にとって大事なものになるのではないでしょうか。桜田さんの発言からはそうした意識が感じられず、他人事です。メディアの側も、今年3月11日の新聞各紙にあったように、「まだつらい」「かわいそう」というような情緒的な写真や記事ばかり出していては、震災は陳腐化し、風化していくでしょう。今回の発言をめぐっても、政局話ばかりが報じられ、今はもう話題にものぼりません。復興基本法には、「復旧にとどまらない」「21世紀半ばにおける日本のあるべき姿を目指して行われるべき」とあります。「失言」と政治家個人を責めて終わらず、震災前から進んでいた水産業の衰退や高齢化が早回しで訪れている課題先進地として被災地をとらえ、我がこととして具体的な議論を始められないでしょうか。(聞き手・田渕紫織)
復興と五輪もとより別のもの 東北学院大名誉教授 岩本由輝さん いわもと・よしてる1937年、東京生まれ。6歳で福島県相馬市に疎開し、そのまま定住した。専門は歴史経済学。飯館村史や大熊町史などの編纂(へんさん)に尽力した。 桜田さんの発言が「失言」だとされていますが、もともと政府の「復興五輪」という言い方がおかしいんです。五輪は五輪でやればいいし、復興は復興でやらないといけない。別のものです。そもそも、「復興」なんて言葉を、僕は簡単に使う気になれません。
東日本大震災では津波を受け、私が住んでいる相馬市でも知り合いが10人以上亡くなりました。さらに福島県は、原発事故による放射性物質の飛散に伴う問題があった。震災後、相馬市に隣接する飯館村で、「蕨平」という地域の歴史を調査しました。村には、放射線量が高く帰還のめどがたたない「帰還困難区域」に指定されている集落があります。その隣の蕨平は指定されなかったのですが、住民たちが放射線量を調べらた、そこより高い数値が出た。「ここも同じじゃないか」となり、住民たちは離れざるを得なくなり、集落がなくなってしまった。そこに何ができたと思いますか? 汚染ごみを処理する減容化施設という焼却炉を国がつくったんです。相馬市には松川浦という内海があります。ここでとれるカレイやヒラメが僕は大好きだった。今は食べてもいいということになったんだけど、やっぱり食べる勇気がなかなか出ない。農家にしても震災前と同じように農業はできていない。震災前にはセリを売り出そうと組合もできたけど、難しくなってしまった。震災から8年たっても、これが現実です。そんな中で、五輪で世界中の人が来るから、おもてなしをしろと言われても、地元のものをごちろうするのもわめらってしまうのに、どうやってもてなせばいいか僕には分かりません。
いつしか五輪のために復興をやっていて、五輪が終わったら、復興期間も終了となるのではないでしょうか。そうなると、悲劇というよりむしろ喜劇だな。東北は歴史的に労働力を東京に供給してきました。つまり、東京は東北を利用するという関係性があった。もはや東京の人たちは昔ほど東北をはじめとした田舎の存在を気にしなくなってきているのかもしれない。そして、実は無関心の人の大部分は自分やその一代前に東京に出てきた人で、そういう人たちが自分のふるさとに関係性を持たなくなってきているじゃないのかな。(聞き手・有近隆史)

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