4月25日 現場へ! フェイクニュース「1」

朝日新聞2019年4月22日夕刊9面:「台風のまっただ中にいる」 「フェイク(偽)ニュース」。この言葉を目にしない日はないような時代を私たちは生きている。2016年の米大統領選では、ロシアがトランプ陣営に肩入れして介入した「ロシア疑惑」が浮上。「情報戦争」の名のもと、ロシアのネット企業がソーシャルメディアに偽情報を流して米世論の分断を図ったと、マラー特別検察官が捜査報告書の中で指摘した。大統領自らが気に入らないメディアを「フェイクニュース」と攻撃する米国で、フェイクニュースに抗う人々は何を考え、どんな取り組みをしているのか。最新の知見を知ろうと米国へ出かけた。
ホワイトハウスまで歩いて10分のところにあるカフェで、米政府系放送局「ボイス・オブ・アメリカ」(VOA)のホワイトハウス担当記者、スティーブ・ハーマン(59)に会った。ハーマンは「私たちは台風のまっただ中にいる。大統領が発信するツイッターに振り回される日々です」と語る。アジア各地で26年間特派員として仕事をし、16年に母国の米国に戻ってきてカルチャーショックを受けた。「米国民が非常に分断されて中庸な人々がいなくなってしまった。自分の国にいながら、どこか外国にいるような感じです」ターゲットとなる「真ん中」の視聴者層が薄くなったことに伴い、テレビ局の放送内容も二極化。「(右派の)FOXニュースなどはもう『客観性』というものを投げ捨ててしまった感がある。その一方で、ニューヨーク・タイムズなどがいくらまじめに事実を報道してもまったく興味を示さない国民がたくさんいるのです」米国には「メディアはトランプ氏のツイートを追いかけてファクトチェックするが、それをやればやるほど報道が『トランプ一色』になる」と批判する人もいる。だが、ハーマンは「大統領の発言を報道しないというのは、僕たちにとって職場放棄だ。もし大統領が『月は緑色のチーズでできている』と発言しても、『大統領がこう言った』と報道しつつ、科学者のもとに走ってファクトチェックもする」と反論。「メディアには常に自己反省が必要だが、『世論がメディアをどう見るか』によって仕事のやり方を変えてはならないと考えている」と話す。
ワシントンのホテルで会ったアメリカン大学歴史学部教授のピーター・カズニック(70)は「米国社会はトランプ氏の登場前からすでに分断されていて、その現実が可視化されただけ」と語る。他方、と壕の悪いメディアを敵視してメディア不信を徹底的にあおるトランプ氏の手法には「民主主義に対する脅威だ」と憤る。フェイクニュースと一口にいっても、政府が作るプロパガンダもあれば、主要メディアが報道する中にも「偏ったフェイクニュース」があるとカズニックはみる。「だからこそ、すべてのニュースに批判的な目を持ち、あくまで自分の頭で考え、冷静に自分で答えを見つけていく。そんな姿勢を今こそ市民に持ってもらいたいと思っています」 =敬称略 (松本一弥)

 

 

 

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