4月24日 特殊詐欺 被害年356億円

朝日新聞2019年4月22日7面:難しい組織解明 社会全体で対策を 高齢者の資産狙う 不特定多数を対象に、主に電話を通じてうそを言い、現金やキャッシュカードなどをだまし取る犯罪が特殊詐欺だ。息子や孫、警察官などになりすますオレオレ詐欺が2003年に目立ち始めた。その後、サイト利用料などの架空の請求や、還付金がもらえると偽るといった手口が次々現れた。警察庁のまとめでは、警察が把握した年間の被害額は14年に568億円とピークを記録。その後減少傾向にあるものの、昨年は1万6493件、約356億円の被害が出ている計算だ。昨年ごろからは改元に乗じた手口も目立つ。金融機関の職員などをかたり、「元号が変わるのでキャッシュカードを交換しないといけない」などとだます。過去にも、東日本大震災や東京五輪・パラリンピック開催決定など、その時々の社会の動きに便乗しただましの言葉が使われてきた。凶悪事件も起きている。資産状況などを探る「アポ電(アポイントメント電話)」は特殊詐欺に使われる手口だが、こうした不審な事前電話の後に家に押し入り、体を縛って現金を奪うなどする強盗が今年1~2月に東京都内で連続発生。江東区では住人の女性(80)が亡くなった。こうしたアポ電強盗は他の地域でも確認されている。特殊詐欺の被害に遭う人の多くは高齢者だ。昨年把握された被害件数全体の78%を65歳以上が占め、オレオレ詐欺に限ると97%にのぼる。高齢者がもつ資産を狙って、身内を案じたり資金を少しでも得たいと考えたりする心情に付け入る犯罪と言える。警察は捜査に力を入れてきた。摘発数は年々増加しており、昨年は2747人を逮捕・書類送検した。ただ、摘発は詐欺の現場で動く「末端」にとどまっているのが実情だ。
受け子 学生も摘発 役割別に見ると、現金やカードなどを被害者から受け取る「受け子」が58%、電話をかける「かけ子」が9%、キャッシュカードでATMなどから現金を引き出す「出し子」や「見張り役」がそれぞれ4%など。首謀者やグループのリーダーなど「主犯」と位置づけるのは摘発したうちの2%に過ぎない。それも、電話をかけるアジト(拠点)の現場責任者といった立場がほとんどという。20歳未満の摘発が多いのも最近の特徴だ。17年は480人、18年は754人と全体の2~3割弱を占め、受け子などが多い。17年の振り込め詐欺では、無職や有職の少年のほか、高校生99人、大学生21人と、生徒・学生にも広がっている。
警察は犯行グループの背後に暴力団や準暴力団・半グレと呼ばれる集団が存在するとみている。捜査幹部によると、拠点の捜索で被害金を発見した例はほぼなく、受け子が手にした現金が、その上の指示役などを経て組織へ流れている状況がうかがえる。しかし、組織の上位の者の逮捕にはなかなか至らない。「かけ子グループ、受け子グループをそれぞれ摘発しても、双方のつながりが出ない。供述も得にくく、犯行グループ全体の解明が難しい」と幹部は言う。
関東地方の暴力団関係者は取材に、一つのグループを仕切っていたと明した上で「かけ子と、受け子・出し子は完全に分離している。互いのことも『上』のことも分からないようにしている」と話す。この関係者は「捜査や対策が進み、前よりやりにくくなっている」としながら「かけ子や受け子の成り手はいくらでもいる」。最近は電話をかける拠点をタイや中国など海外に置く動きもあるという。捜査の現状を打開すべく警察庁は、暴力団や準暴力団といった組織の弱体化を通じて特殊詐欺を抑え込む方針を打ち出した。昨年9月、全国の警察にあらゆる法令を駆使した多角的な取り締まりを指示。幹部は「組織の力をそぐことが特殊詐欺の減少につながる」と語る。警察はその成果が問われる。被害を減らすため、これまでも様々な対策が講じられてきた。金融機関の窓口やATMで、利用する高齢者に職員らが声をかける対応は広がり、これにより昨年は実際に被害に至った件数とほぼ同じ約1万4千件を防いだ。
警察庁が昨年実施した調査では、オレオレ詐欺の被害者の7割は、犯人の電話でトラブルの話が出る前にだまされていた。息子などの声にそっくりだっため、電話の初めから信じてしまうケースが多いことが分かった。一つの対策として自動通話録音機が有効とされる。着信時に「会話内容が自動録音されます」などとメッセージが流れるため、自分の声を録音されるのを恐れる犯人が電話を切るとみられる。各地の自治体などが無償貸し出しや購入費の補助をしている。警察は、普段から家族の間でこまめに連絡を取り合ったり、合言葉を決めておいたりすることも被害防止につながるとしている。
金銭・急がせる注意 詐欺被害者の心理や行動を研究している西田公昭・立正大学教授(社会心理学)は高齢者への注意喚起の在り方について提案する。単に「詐欺・不審電話にちゅういしよう」と呼びかけでは効果がないと指摘。電話の相手を信じてしまっても構わず、「金銭」「急がせる・焦らせる」などの話が出た時だけ気をつけるようにするのが有効という。「思考の切り替えは日頃の訓練で可能で、高齢者が参加して学ぶ場があるといい」と話す。高齢化が進んで狙われる対象は広がっていく中、被害を少しでも止めなければならない。国や自治体、警察、関係の機関や事業者、専門家、地域。社会全体の問題としてそれぞれの立場で取り組を進める必要がある。

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