4月24日 バブルの負債子世代に 親の借金強引に回収図る

東京新聞2019年4月21日28面:銀行に「だまされ」迂回融資協力 バブル経済絶頂期の1989年に平成は始まり、あと10日で終焉する。あれから30年。「第二の敗戦」とも呼ばれたバブル崩壊の余波は、さすがに収まったものだろうか。「とんでもない。今もなお多くの個人を苦しめ、次世代にもその影響を及ぼしている」と語るのは、96年に結成された「銀行の貸し手責任を問う会」事務局長を務める椎名麻紗枝弁護士。平成の金融・行政・司法が、いかに庶民を犠牲にしてきたのかを聞いた」 金融機関と対峙 椎名弁護士に聞く 「30年前に端を発したある銀行の迂回融資事件が、やっと昨日、完全に終結した。しかし、平成30年間を銀行にだまされ、司法に裏切られてきた被害者家族は『本当に終わりなのか』と疑心暗鬼のまま・・」。19日の取材で椎名氏はこう語った。一体どんな事件だったのか。時は、1990年代にさかのぼる。横浜市のマンションオーナーの男性Aさん(50)の父親は、旧知のB銀行支店長から執拗に頼まれ、しぶしぶ口座の名義貸しをした。B銀行が市内のC不動産会社に、迂回融資するめただった。
90年といえば、大蔵省(現財務省)が不動産事業融資の総量規制を通達した年。C社に貸せなくなると、建設中だったマンション2棟のプロジェクトが行き詰る。B銀行は父親を通じてC社にカネを回すことを計画したのだ。融資額は計23億円にも上った。しかし、この迂回融資にはワナがあった。銀行は「形だけだから」と父親に契約書へ実印を押させ、「カネの出入りの処理はこちらでやります」と通帳も預かった。さらには「C社への融資を保全するためマンションの名義を父親にしてほしい」と書き換えさせた。こうして、あたかも父親が23億円を借りてマンションを建設したかのようにしたのだ。
後に銀行が融資返済を求めた訴訟で、父親は「銀行を信用して支店長に協力しただけ。だまされた」と怒りの反論をしたが、一、二審とも銀行が父親の破産を申請し、全財産をみぐるみはがそうとした。国会などで銀行のこの強引な手口が問題視され、父親とB銀行は23億円の分割払いに合意し、父親は10億円分を返済した。だが、父親が死去した16年以降、銀行側は「合意は父親と結んだもので、相続人のAさんとの合意はない」として、遅延損害金計21億円を加えた計34億円を一括返済するよう要求した。Aさんが「とても払えない」と拒否すると、Aさんの全財産を競売にかけると裁判所に申請したのだ。
昨秋の「こちら特報部」の取材に、Aさんは「父親は、死ぬ間際まで『銀行にだまされた』と繰り返していた。裁判所で真実が明らかになると信じていたが裏切られた、と。なぜこんなひどい仕打ちを受けなければならいのか・・許せない」と語った。その後、心労から体調を崩し入院。体重は50㌔も減り、重篤な病気にかかった。椎名氏は「迂回融資、付け替えという銀行のひどい手口を裁判所が見逃し、銀行の言い分をうのみにする。金融庁も銀行を指導しない。もとはと言えば、銀行のせいで起きたことのなに、貸し手の責任は全く問われていない」と話す。(大村歩)
同日29面:貸し手責任問わぬまま 銀行は公金注入・税免除 ツケ払う個人・中小企業 バブル経済全盛期、銀行は融資先の獲得に文字通り血眼になった。激烈な競争の中で、各銀行はただ預金をしているだけの個人を、貸付先に変える営業戦略をとった。180年代から不動産を担保とする個人向けの「大型フリーローン」が活用された。資金使途も返済原資も不問で、当初5千万円だった融資限度額は、最後は数10億円規模へ。その融資件数は100万件にも上った。銀行は、不動産、ゴルフ会員権、元本保証のない変額保険、株式などへの融資を持ち掛ける「提案型融資」を盛んに仕掛けた。
高齢者に「土地が高騰して相続税が払えなくなる」とあおるのが常套句。当然、バブルが崩壊すれば、こうした融資はたちまち不良債権化し、銀行は個人の自宅を競売にかけるなど、荒業を使って回収に走った。医療過誤や薬害エイズといった問題に取り組んできた椎名氏は、銀行融資を巡紛争に詳しいわけではなかった。「銀行は融資先の返済能力などを厳格に審査する堅い金融機関」という思いがあった。だが91年、「株取引でもうけよう」と銀行から持ち掛けられ、26億円もの融資を受けて返済に困った男性から相談を受け、衝撃を受けた。「銀行は一体、何をやっていてたのか?」。疑問を深め、精力的に銀行融資の実態を調べるうちに、椎名氏のもとに救済を求める被害者が集まってきた。これまで関わった案件は400件以上。融資の際の甘言を「言っていない」とウソをつき、「契約書に印鑑を押しただろう」と迫る銀行のやり口は共通していた。しかし、司法に救済を求めても、裁判官は銀行の言い分をうのみにし、被害者に冷淡だった。「これはもう、銀行の貸し手正責任を問う立法的救済しかない」と、96年に「銀行の貸し手責任を問う会」を発足させた。政府に求める内容は、▽連帯保証人に対する取り立て規制▽強引な債権回収が問題になっていた整理回収機構の解散ーなど八つ。特に「日本の法律は銀行取引に関してあらゆる面で銀行有利・借り手不利」として、銀行と個人の圧倒的な力の格差を解消するため、債務者側に勝った仲裁機構を設立し、その和解案を銀行が拒絶できない法制度を作るべきだと求めた。そして、会の発足から20年余りが過ぎた。椎名氏は「事態は前に進んでいない。バブル崩壊の生々しい記憶が薄れ、世論が関心を持たなくなった。欧米では貸し手責任の法理も一定程度浸透したが、日本では研究者すら少ない」と嘆く。
不動産向け貸し出しピーク水準超え 新たな被害者産む恐れ Aさんのケースのように、まだバブルの後始末は終わっていない。それどころか「別の形で銀行による無理な融資の被害者が出そうだ」と、椎名氏は喜期間を募らせる。女性向けシェアハウスへの不動産投資に関して、融資審査書類の改ざんなどが発覚したスルガ銀行のケースなどがそれにあたる。17日に発表された日本銀行金融システムリポートも「銀行の不動産業向け貸残高は、全国的かつ大幅な地価上昇がないにもかかわらず、バブル期のピーク水準を上回って増加」と指摘。バブル期と異なり、融資先に「個人など必ずしも損失吸収力の髙くない借り手の比重が高い」と警鐘を鳴らした。「大手銀行は貸し手責任を問われることなく、12兆円もの公的資金が注入され、20年近くも納税を免除されてきた。一方、銀行の狡猾な手口により巨額の負債を背負わされた多くの個人、中小企業は、過剰融資の後遺症に苦しんでいる。この人たちの負債を軽減し安心して暮らせるようにすることが、最大の景気対策ではないか」。椎名氏はこう訴えた。

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