4月22日 全国学力調査 初の英語実施

朝日新聞2019年4月29日2面:「話す力」問うのも難題 パソコン使い解答 小学6年と中学3年を対象とした、文部科学省の全国学力調査が18日あり、国公私立に通う計約212万人が参加した。毎年実施している国語と算数・数学に加え、中3は初めて英語も出題された。筆記問題で測る「聞く・読む・書く」の3技能のほか、パソコンなどを使って「話す」力も一斉に問う、これまでにない挑戦だ。
「ICT(情報通信技術)環境を活用しての本格的な調査を、これほどの規模で実施するのは、学校にとっても文科省にとっても初めての経験ではないか」18日に文科省内で開かれた会見の冒頭、岸本哲哉・調査企画課長はこう語った。約100万人の中学3年生を対象に実施した、英語の「話す」力を問う調査を「従来の筆記方式ではない、これまでにない挑戦」と位置づけた。
「グルーバル人材の育成」を目指す政府の方針もあり、文科省にとって英語教育の改革は重要課題だ。特に、従来の「読む・聞く」だけでなく、「話す・書く」を含めた4技能の育成を強調する。2020年度から小学5・6年生で英語が教科となり、新たに始まる「大学入試共通テスト」では、4技能を問う英語民間試験が導入される。「小学、高校と改革が進み、残りは中学。公立中の全生徒が受ける学力調査は一番の刺激になる」と、文科省幹部は語る。「話す」力の調査は、学校が事前にダウンロードした、出題内容が記録された動画をパソコンで再生し、マイクとヘッドホンが一体となったヘッドセットをつけた生徒が話して解答する形式。録音された解答はUSBメモリーに記録して集め、文科省が委託した業者が聞いて採点する。学校によって環境が異なるため、文科省は特例的に実施しないことも認め、都道府県別の正答率は公表しない。
出題されたのは、イラストに描かれた子どもたちが何をしているのかや、海外のテレビ局から取材を受けた設定で、将来の夢と、その実現のために取り組んでいることを答える問題など。英語教育についての文科省の調査研究にも関わった秋田県立秋田南高校・中等部の吉沢孝幸教諭(51)は、「出題文を日本語に置き換えて考えるのではなく、英語のままで理解することを求める内容で、一連の改革を踏まえている」と話し、「話す」力の調査も「即興力が問われ、単語や基本文の学習だけでは答えられない」と評価する。文科省は今後も、3年に1回程度は学力調査に英語を加え、「話す」力も調べる方針。専門家を集めた調査検証チームを立ち上げ、実施方法を分析し、今秋をめどにとりまとめる。(矢島大輔、宮坂麻子)
周りの答えを聞こえる準備に1台1時間 設備や学校負担に懸念 「これは、先生たちにも受けたとこがないテストです。本当に初めてです」東京都内の公立中学では、調査が始める前に英語の担当の女性教員が生徒たちに語りかけた。教室では長机が4列になって置かれ、ヘッドセットがつなげられたパソコンが10台ずつ並べられていた。生徒たちは落ち着かない様子で、ヘッドセットを装着。教員の合図でパソコン画面上の「調査開始」のボタンを押し、問題を聞き始めた。生徒の間隔は約40㌢と近く、音声を聞き取れるようヘッドセットを手で押さえたり、マイク部分を手で覆うようにして解答したりする生徒も。調査を終えた女子生徒は「問題は難しすぎず、ちょうどいい。でも、周りの声がちょっと気になった。私のマイクに周りの声が録音されてしまわないか心配だった」
他の学校でも戸惑う生徒がいた。福岡市の男子生徒は「考えた答えと違うことを周りが言っていて、不安になって変えた」と話した。名古屋市の女子生徒は「普段の授業は読んだり書いたりが多く、話すことはあまりないから難しかった」と少し疲れた様子。「将来は英語を使った仕事をしたいので、話す力もつけていきたい」 調査は、学校側への負担も大きかった。都内の別の公立中では、テストの動画などをダウンロードし、動作確認をするため、1台のパソコンあたり1時間弱かかった。40台の設定を終えるためには、40時間近くになる。校長は「たくさんのクラスで一斉となったらとてもできない」と話す。(円山史、浦島千佳、渡辺純子)
調査の結果だけで判断するのは乱暴 英語教育に詳しい鳥飼玖美子・立教大名誉教授の話 英語の出題内容は、中学生の力を問うには妥当な内容だったと考える。ただ、全体を通じて、様々な解答が寄せられ、採点のブレが生じると思われる。特に「話す」力を問う問題は、周りの声で設問内容が聞こえなかったり、周囲を気にして低い声で話したりしたために判別できなかったりする場合もありえる。調査結果だけで、中3のスピーキング力を判断するのは乱暴だ。近年の英語教育は「4技能」を強調し、特に「話す」が注目されている。確かに、英語を話す力を伸ばすことは重要だ。一方、自然な会話では、一方的な質問に答えたりすることは少ない。試験という人工的な場で、英語のでの対話力を問うことは難しい。今回の調査を通じて、「話す」力を大学入試で問うことの難しさを改めて考えて欲しい。

 

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