4月21日 オトナになった女子たちへ 益田ミリ

朝日新聞2019年4月19日31面:「しあわせ」あるある 夜、大勢のオトナが集まってなにをしたのかというと「しりとり」である。この連載、4年分をまとめたエッセー集「しあわせしりとり」の完成を記念して、出版社で書店員さんたちとしりとり大会をしたのだった。(テレビ電話のようなもの)を使ってのハイテクしりとりでもある。しあわせなものだけでつなげていくルールがあった。「ふるーつさんどいっち」からスタートした。わたしだ。大好物なのだ。たまに差し入れに作ることもあるが、そん時はいいイチゴを選び、いい生クリームを使う。でも食パンはスーパーのお手頃価格。いろいろ試してたどり着いたのである。
しあわせしりとり。食べ物は他にもいろいろ出てきた。「ちーずとびーる」と言った人がいた。長い。でも、このセットがよいのだろう。どこからともかく「それ、しあわせ・・」と声が漏れてきて笑ってしまった。「くぎに」が出たときは懐かしかった。くぎにとは、いかなごという小さな魚を甘辛く煮たもので、関西に住んでいた頃の馴染みの味。うちの父が好きで、ごはんに山盛りのっけて食べていた。いかなごは春を知らせる魚だった。「る」に当たって苦戦している人がいた。たしかに「る」ってないんだよなぁとわたしも腕組み。沈黙ののち、その人は「るーむ」と言った。ルーム。部屋である。もうずいぶん前になる仕事の打ち合わせの席で雑談になったとき、ひとりの女性がぽつり。「わたし、走って帰ることがある」 ランニングという意味ではなかった。外の世界に疲れ果て、一分一秒でも早く自分の部屋に戻りたい。そんな夜は駅に着くとヒールのまま走って帰るのだという。想像した。彼女がカッカッカッと商店街を駆ける姿。それはわたしの姿でもあった。あるよ、そういう日。今も。気持ちがわかったから覚えているんだろう。「るーむ」は自分を守る安全地帯でもあった。くぎに→にじ→じぞうぼんのおやつ→つるのおんがえし。最後の人が「しあわせ」と言うと拍手が起こった。(イラストレーター)

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