4月18日 巨大噴火「5」

朝日新聞2019年4月12日夕刊11面:日本存続 国が戦略考える時 水面がきらめく鹿児島湾を、日豊線の車窓から眺める。どっしりした桜島に目を奪われるが、頭の中で、この景色を消してみる。約3万年前、桜島もこの海もまだない時代。破局的な噴火が起こり、火砕流が九州南部を埋め尽くし、大カルデラができた。線路沿いの髙い崖は、カルデラの壁だ。後にカルデラの南側で噴火が起こり、桜島となり、カルデラに海水が入って湾になる。桜島は姶良カルデラの子供のようなものだ。巨大カルデラ噴火を起こすには、膨大なマグマがたまる必要がある。この湾の地下に姶良カルデラの巨大なマグマだまりがあったはずだ。マグマだまりはどうなっているのだろう。京都大防災研究所准教授の中道治久(46)は、地殻変動のデータから、今もマグマは蓄積しつつあると考えている。マグマだまりは桜島の地下につながる。桜島は小噴火を繰り返しているが、1914年に規模が大きい「大正噴火」があった。いずれ同規模の噴火が起こるとみられている。
だが、それ以外のことが起こるのか。「巨大噴火の発生の可能性があるとしても、それがどの程度の可能性なのか、姶良カルデラで再び巨大噴火が起こるとしたらいつなのかは全くわからない」と中道は言う。2017年末、広島高裁は四国電力伊方原発(愛媛県)に阿蘇カルデラ(熊本県)の巨大火砕流が到達する恐れがあるとして、運転差し止めの仮処分の判断をした。しかし、広島高裁の別の裁判官が四国電力の異議を認め、「(破局的噴火を)想定しなくても安全性に欠けないとするのが社会通念」として、翌年決定を取り消した。「巨大カルデラ噴火」の観測経験はなく、噴火に至る過程は謎が多い。科学的なリスク評価を知り、発生確率が低いからリスクを受け入れると社会は判断しているのか。社会通念という語の使われ方に違和感を覚えた火山学者も少なくない。「社会通念になるほど巨大噴火は知られていない。多くの人は、巨大噴火は起こらないと思っているのでは」と京都大名誉教授の石原和弘(71)は話す。
京都大防災研究所教授の井口正人(60)も「私が生きている間にはまず起こらないでしょう。しかし年限を切らなければ、巨大噴火は必ず起こる。そのとき、国家としてどう考えるのか。国が戦略を考える必要がある」と言う。これまで日本で最大級の災害が、東日本大震災だった。巨大カルデラ噴火はその規模を超す。市町村に判断できる問題ではなく、どうしていいかわからない。もし何十万人が避難するなら、どういう手段があるのか。そのためには何カ月前に「警報」を出す必要があり、その警報を出すためにはどんな研究が必要かー。戦略研究が必要だと考える。巨大噴火は「自然の脅威」か「原発の立地条件の争点の一つ」の視点で語られることが多い。そうした枠をこえ、将来も日本が存続するために何ができるのかを考える時ではなかい。 =敬称略(おわり)(編集委員・瀬川茂子)

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