4月18日 北海道・北星学園余市高 存続の危機

東京新聞2018年4月13日24面:あと5人 期限は来月1日 問題児も不登校の子も発達障害の子も、どんな生徒でも受け入れますー。そんな方針で知られる北星学園余市高校(北海道余市町)が、廃校の危機に直面している。5月1日までに1,2年生であと5人、生徒を増やさなければ、来年度から生徒募集をしない。タイムリミットが迫り、教職員はもちろん卒業生も立ち上がっている。 (片山夏子、大村歩)
問題児を受け入れ30年 札幌から列車を乗り継いで1時間余。余市町は、北海道西部の積丹半島の付け根にある。人口約1万9千人。町の北側で日本海に面するほかは丘陵に囲まれている。ウイスキーやワインの製造で知られている。その町の北部にある北星学園余市高校は、1965年にキリスト教系の普通高校として開校した。もともとは公立高校に入れない地元の生徒の受け皿だった。
その後、少子化と過疎化のあおりで生徒が減り、いったんは廃校が決まった。その時、先生たちは必死に考えた。「他の学校が面倒を見切れない生徒を受け入れたらどうか」。88年から、さまざまな問題を抱えている生徒の転入を受け入れるようになり、入学希望者が殺到した。今月中旬、高校を訪ねた。職員室の扉を開けると、生徒が体育んも先生を囲んで談話していた。「先生だ~い好き」。紫の髪の3年の女子生徒は、後ろから教師に抱きついた。
同じような光景が職員室のこそかしこで見られる。茶色、オレンジ。さまざまな髪の色の生徒がソファで音楽を聴いたり、同級生らとふざけたり。職員室は笑い声でいっぱいになった。私服で登校し、ピアスも構わない。先生によっては、机に飲み物を出して授業を受けることも認めている。授業をのぞくと、後ろを向いて雑談をしている女子生徒。男性の先生が「ほらそこ見つめ合わないで。僕と見つめ合って」と注意すると、女子生徒は「喜んで」と応じた。注意した先生は、高校の卒業生だ。こうやって学校生活を送っている生徒の多くは以前、不登校だったり、いわゆる不良だったり。地元の学校になじめず、余市へと移ってきた。4月10日現在の在籍数は200人。その3分の2は道外の出身だ。
いわゆる「問題児」が多いので日々、トラブルが起きる。職員会議は日をまたぐこともしばしばだ。先生たちは体当たりで生徒と向き合う。その様子はドキュメンタリーやドラマになった。その高校の生徒が減り続けている。ここ10年ほど60人前後だった新入生が2015年は40人台に。経営母体の学校法人北星学園は「経営状態の回復の見込みがなくなってきた」と廃校を検討し始めた。当時の校長だった安河内敏先生(52)が再考を求めた。そして存続の条件が示された。
17年度から3年間、毎年、70人以上の新入生を確保すること。1年目はなんとか達成した。2年目の今年はさらに1.2年生で計140人以上という条件も満たさなければならない。なのに5人足りない。5月1日の時点で達成できていないと、来年度から新入生を募集しない。なぜ高校は苦境に陥ったのか。


25面:ぶつかり合い生き方学ぶ「今こそこんな学校必要」 「昔は不登校の子どもの受け皿がなかった。しかし、最近は広域通信制の学校が急激に増えた。わざわざ北海道に来なくても、という生徒が増えた」と平野純校長(55)は語る。かつては、問題のある生徒の受け入れ先の主役は定時制高校だった。近年は通信制高校がその座に取って代わった。文部科学省の学校基本調査によると、少子化の中でも通信制高校の生徒数は約18万~19万人で安定している。その中で全国から生徒を集める私立の広域通信制高で生徒数が増えている。今は約10万人に上る。通信制は、自宅を中心に生徒それぞれのペースで学習できる。不登校の子どもにとってもハードルは低い。しかし、就学支援金の詐欺事件があったウィッツ青山学園高(三重県伊賀市、廃校)のような問題も表面化している。株式会社が経営に乗り出していることにも賛否がある。
募集活動OB、保護者も協力 中央大の池田賢市教授(教育学)も通信制の意義を評価しつつ、「広域通信制高ではサポート校と呼ばれる塾のようなところで授業を受ける場合が多く、その授業料が高いといった問題もある。公教育の民営化という側面が色濃く、どうしても教育に利益追求を持ち込みがちだ」と問題点を指摘する。
また、通信制でなく、学校生活を送らないと学べないこともある。北星学園余市高校は、8割の生徒が下宿生活をしながら、時にぶつかり、時に支え合いながら人間関係を学んでいる。「人の目が気になり不安で何度も辞めようと思ったが、そのたびに友達が声を掛けてくれた」。東京出身の生徒会長、伊藤啓さん(17)は余市での学校生活を振り返る。東京の時は、学校が息苦しく、中二から自宅に引きこもってゲームばかりしていた。ところが、余市にくると、ヤンキーも引きこもりもいて、先生も個性豊か。自由を感じた。「先生たちは僕の存在を認めてくれた。下宿の人たちも親以上に真剣に見ていてくれる。俺にも居場所があると感じた。周りが自分を変えてくれた」 同級生の合田奈那子さん(17)は、小中学生の時にいじめにあい、いらついてひとり親の母親を責めた。家を離れなくてはと思った時に北星余市を知った。学級委員に推薦されたのが、高校生活の転機になった。
「友達の期待を裏切りたくなくて変わりたいと思った時、先生は夜も下宿に来て話を聞いてくれた」という。もし余市がなかったら。合田さんは「私は生きていなかった」と話す。「余市がなくなったら、私みたいな思いをしている子が楽になったり自分でもいいと思える場所がなくなる」出前の安河内先生は「ここに来る生徒はみんな何かに傷ついている。だから、心閉ざしていたり、傷ついたりする他の子をほっておかない。北星余市の教育は昔ながらのやり方。しかし、社会や家庭が不安定ないまだからこそ、こんな学校が必要です」と語る。

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

ご予約・お問い合わせはお気軽に

Tel0120-740-276

〒352-0011 埼玉県新座市野火止8-14-29

ページトップへ戻る