4月15日 巨再噴火「2」

朝日新聞2019年4月9日夕刊5面:宇宙からしか見えません 「あった」。神戸大教授の鈴木佳子(64)がはずんだ声をあげた。鹿児島県霧島市で探していた「崖」を見つけたのだ。崖はそこらじゅうにあるが、植物やモルタルに覆われておらず、ちゃんと地層が見える所は意外と少ない。ハンマーでたたくと、簡単にぼろぼろと崩れる。石や火山灰が乱雑に混じり、指でさわるとじゃりじゃりする。ガスや火山灰、石が時速100㌔で流れる「火砕流」として噴出、堆積したものだ。
林の中の坂を上って見晴らしがいい場所に出てば、青空を背景に直線を引いたような平坦な面が低地のむこうに見える。南九州のあちこちにある「シラス台地」だ。ここも遠くからみれば、同じように見えるだろう。さっきの崖は、巨大噴火がつくった大地の断面だ。動物も植物もあらゆる生物を焼き尽くしながら、谷を埋め、地形を一変させた巨大噴火。それを繰り返してきたが、とくに約3万年前の火砕流は、鹿児島、宮崎、熊本まで広がるシラス台地を残した。
この壮大な規模。いったいどんな噴火だったのだろうか。「宇宙からしか見えません。あまりに巨大だから」鈴木は淡々と話す。学生時代から九州に通い、火砕流を出した火口が没落してカルデラができる「巨大カルデラ噴火」について調べてきた。日本列島の、過去12万年間の噴火を調べ、噴出物の量が1千億㌧以上の巨大噴火が、今後100年以内に起こる確率は1%と計算した論文を発表した。非常に低い確率のようだが、1995年の阪神大震災直前における、地震の30年発生確率と同程度という。共著者の神戸大教授、巽好幸(64)によると「300万年前から日本周辺のプレートの配置は同じ。過去300万年に起こったことは、将来も起こる。100万年の寿命の火山活動を、人のタイムスケールで測ることは間違いだ」。190㌢を超す長身にスキンヘッドの巽が話すと迫力がある。
最悪の事態を想定し、九州中部で噴火が起こるとすれば、1.2時間で700万人が暮らす地域を埋めつくし、噴煙は西風に乗り、関西に50㌢、首都圏に20㌢、東北に10㌢の火山灰を降らせ、日本の大半が火山灰に覆われると予測されるという。「灰に弱いライフラインがやられて国家存亡の危機」
神戸大グループは3年前から、鹿児島市から50㌔南の海底で鬼界カルデラの調査を行っている。約7300年前の噴火では、火砕流が海を渡って鹿児島県南部まで到達したことが知られているが、海底調査はあまり進んでいなかった。観測装置をのせた大学の練習船・深紅丸で、巨大噴火後、カルデラの中にできた大きな溶岩の丘を詳しく調べた。その岩を採って分析すると、7300年前の噴出物と成分が違っていることがわかった。巽は言う。「新たにマグマが供給されている証拠。現在も巨大なマグマだまりが存在している可能性がある」 =敬称略 (瀬川茂子)

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