4月14日 巨大噴火「1」

朝日新聞2019年4月8日夕刊7面:僕は一瞬で死んでしまう 原子力規制委員会が、安全研究の一環として「巨大噴火」の可能性を評価するための研究を進めている。万が一の場合、電力会社は巨大噴火の兆候をとらえ、原子炉から核燃料を取り出すなどの必要な措置をとるとしているが、「予測は不可能」と批判する学者もいる。そもそも巨大噴火とは何か。巨大な噴煙柱が立ち昇って大地を隠すー。鹿児島に行き、鹿児島大准教授の井村隆介(55)に、講演で使う画像を見せてもらった。噴火のイラストや、九州地図の上に次々と円が現れる画像だ。58万年前・・、7300年前。「この円がそれぞれの巨大噴火で、火砕流にのみ込まれる地域です。全部重ねると、九州がほとんど見えませんね」 井村の説明は歯切れがよくてわかりやすい。一般向けに、年に50回以上講演する。
東日本大震災の原発事故をふまえ、原発の火山対策は強化された。原子力規制委員会は、258万年前以降に活動した、原発から160㌔範囲の火山で、対処不可能な現象が見込まれるなら「立地不適」とするルールを作った。巨大噴火の火砕流に巻き込まれたら対処不可能だからだ。ただし運転期間中に起こる可能性が十分小さければ監視しながら運転できるとして2015年に九州電力川内原発の再稼働が認められた。「本当のところ、どうなの」防災担当者などから聞かれて井村は答えた。「巨大噴火が起こり、火砕流に巻き込まれたら一瞬で死にます。僕は死んでしまうので、原発なんか知ったことじゃない」
原発で働く人が火砕流に巻き込まれたら原発は制御不能だ。火砕流に原発が埋もれて「石棺」のようになるかもしれないが、フィリピンのピナトゥボ火山では堆積した火砕流の2次爆発が続いた。巨大噴火の発生確率は低いが起これば全国に放射性物質がまき散らされる可能性があると井村は言う。「鹿児島より困るのは東京の人ではないか。全国に厚い火山灰が積もり、流通が途絶えて食料不足になる可能性がある」
井村が火山学を志したきっかけは、高校時代に読んだ「火山灰は語る」だった。同書の著者、東京都立大名誉教授の町田洋(86)は、日本の地形は噴火や地震など自然の猛威の影響を強く受けてでき、破局的な規模の現象は繰り返し起こると本に書いてきた。しかし、地学の知識は社会に浸透していないと町田は東日本大震災で痛感した。原発立地をめぐる議論でも同じだ。「原発に賛成か反対かという立場がまずあり、研究成果については都合のいい部分だけ切り取っている。科学的な態度ではない」 科学者として客観的に事実を伝える責任があると考え、原発の運転差し止めを求める市民側の依頼で陳情書を書いた。原発をどう扱うかは「人類が、本当に賢い理性をもった存在で、今後も社会を永続させることができるかどうかを問う問題であると考えられます」。=敬称略(編集委員・瀬川茂子)

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