4月13日 未来からの挑戦「1」

朝日新聞2019年4月7日4面:接客ロボ「大量解雇」の誤算 少子高齢化ととに、日本の人手不足は進んでいく。老いる社会の「特異点」に向かう日本で、人工知能(AI)とロボットは、「救世主」になれるのか。名物の「コンシェルジュ」は、わずか版投資でクビになった。長崎県佐世保市のテーマパーク、ハウステンボスの隣にある「変なホテル」。フロントでは恐竜や女性のロボットが出迎えてくれる。2015年にオープンし、「ロボットが初めて従業員として働いたホテル」とギネス世界記録に認定された。そのロボットホテルで、「リストラ」の嵐が吹いている。
「僕の名前はNAO(ナオ)だよ」。客の質問に応じたヒト型ロボットのNAOにはAIが搭載されていた。「チェックアウトはいつ?」「朝食の時間は?」などの質問を受けながら学習し、人との会話が上手になるはずだった。しかし実際には、想定外の質問が向けられた。例えば「別府温泉に電車で行くにはどこで乗り継ぐの?」「釣り堀を予約して」。客が100人いれば100通りの質問や要望がある。そのすべてに応えるには、まだAIの会話能力には限界があった。
NAOの代わりにロビーで会話の相手をしたAIロボットもいなくなった。17年のピーク時にホテル全体で27種、243体いたロボットたちは現在16種128体半分近くに減った。いずれはロボットの種類を1ケタにまで減らす。「人手に頼らないホテルをめざしたのに、ロボットの面倒をみるために人手がかかってしまった」。大江岳世志・総支配人(35)は振り返る。当初の約30人から8人に減らした従業員が数時間かけて充電したり、インターネットにつなげたりと、ロボットを働かせるために追われた。茨城県出身の大江さんは、ハウステンボスの親会社である旅行会社エイチ・アイ・エス(HIS)の社内公募で総支配人に選ばれた。
HISの沢田秀雄社長が託されたミッションは「生産性を追及した今までにないホテル」。佐世保市は人口約25万人、付近には大きなホテルも立ち並び、ハウステンボスもスタッフ集めには苦労している。「ロボットは万能ではない。ただ仕事を一部任せれば人の負担は少し減る。どこまで任せるのか。丸3年やってみて、その切り分けが大切だと気づいた」と大江さんは話す。今後はロボットではなく、テクノロジーで未来感を演出する。今春にはAIを使ったNECの顔認証技術を使い、店員のいない国内初の本格的な「無人コンビニ」を始めた。実験ホテルの試行錯誤は続く。
人手不足 自動化に挑む物流 長さ3㍍のアームを大きく伸ばし、黄色いロボットが洗剤の詰め込まれた段ボールをつかみあげる。クルリと回転し、コンベヤーに次々と下していく。昨年8月、日用品卸大手パルタック(本社・大阪市)の物流センターが新潟県見附市の産業団地の一角にできた。最新鋭の物流拠点として、AIを搭載するアーム型ロボットを採用した。ドラッグストアなどからの発注に応じ、メーカーから納められた日用品を自動で仕分ける。
子供用おむつ、ペットボトル・・。商品の点数は約2万点に及ぶ。商品が詰められた段ボール箱は形もさまざまだ。目的の商品を3Dカメラで見分けコンベヤーに下すまでの最短経路をAIが瞬時に計算する。人が積み下ろしていた作業を完全に自動化した。AIによる制御装置をつくったのは、東京都墨田区の下町にあるベンチャーのムジンだ。その技術は中国ネット通販2位の京東商城(JDドットコム)が上海につくった無人倉庫にも採用された。「人手不足に悩むすべての産業にAIロボットを提供したい」と滝野一征・最高経営責任者(34)は意気込む。パルタックが採用した理由も人手不足だ。少子化や若者流出で、地方ではパートが集まりにくくなった一方、アマゾンなどネット通販の急成長で物流量は増えた。新潟の場合、パートの人数は約80人で近くあった旧センターと変わらないが、出荷額は倍の250億円になった。「やがて完全に無人化したい」とパルタックの三木田雅和・研究開発本部長(45)は話す。三木田さんは自動車大手のホンダに勤めていたとき、二足歩行ロボット「アシモ」を開発していた。しかし、事業化は難しく、今後の開発計画は未定だ。「世の中に役立つロボットをつくりたい」と三木田さんは転職を決め、4年前に畑違いの物流業界に転じた。自分で考えて歩くアシモで培った自律移動の技術は、新潟の物流センターでも生きる。商品を保管する高さ約9㍍の巨大倉庫には、小さなAIロボットも使われ、商品の格納と出庫の完全自動化を支える。「技術革新の速度はめざましい。やがてAIやロボットに人の仕事は奪われ、所得格差は広がる。完全自動化で物流コストを下げれば、所得の低い人も日用品を買えるし、生活水準を維持できる」。三木田さんは先の時代を見すえる。
仕事失う人どう支援 AIやロボットによる自動化は「待ったなし」の課題だ。15~64歳の「生産年齢人口」は50年、ピーク時の1995年の6割まで減る。ホテルや旅館などの宿泊業の場合、約60万人いる就業者は30年に48万人まで減ると、みずほ総合研究所は予測する。政府が掲げる「30年に訪日外国人6千万人」の目標を達成すると、13万人の人出が足りなくなる。生産性を今より30%向上させれば48万人でも足りる計算だが、みずほ総研の宮嶋貴之・主任エコノミストは「AIがどこまで進化するかは読みにくい。料金支払いなどフロントの一部は自動化できても、人との意思疎通が欠かせないコンシェルジュなどは置き換えられない」と指摘する。政府の試算によると、AIの活用が進んでも働き手の数も減るため、30年には約64万人分の人手が不足する。職種でみると、介護職員や最先端の技術者らコミュニケーション力や専門能力が必要な仕事は増える一方、工場の生産ラインや事務職などの定型的な仕事は大きく減る。仕事を失う人たちの転身をどう支援するのか。AI社会に必要なスキルをどう身につけてもらうのか。考えるときがもう来ている。(編集委員・堀篭俊材)

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

ご予約・お問い合わせはお気軽に

Tel0120-740-276

〒352-0011 埼玉県新座市野火止8-14-29

ページトップへ戻る