4月12日てんでんこ 養殖カキの春「4」お返し

朝日新聞2018年4月4日3面:フランスからロープを空輸。翌年の出荷のためにスピードが求められた。 フランス大使館(東京)の経済参事官エティエンヌ・ローランピエーグ(49)の妻は日本人で、その両親は東日本大震災当時、宮城県で暮らしていた。義弟が院長を務める石巻市の診療所も津波がすぐ目の前まで来た。
そんな被災地への思いは、かつて病気で絶滅寸前だったフランスのカキが、宮城から贈られた種(子ども)ガキに救われたことに対する「お返しプロジェクト」として結実した。実際に動き出したのは、震災があった2011年6月。7月上旬には同県気仙沼市の唐桑半島の漁師に物資を届けなければならなかった。そうでなければ、翌年の出荷再開が難しくなるからだ。スピードが求められた。
「お金はだいじょうぶだ」。ローランピエーグは、プロジェクトのパートナーで、日本の零細企業などへの小口融資を手がける友人のロベール・ヴェルディエ(58)に言った。養殖に必要なロープやブイなどを買う25万ユーロ(約3260万円)の8割は、フランスのある有力財団が約束した。ただ、世界有数のカキ養殖地、マレンヌ地方の自治体が残りを出すとしていた計画が頓挫してしまう。どれだけ必要かという点で行き違いがあった。
その窮地を救ったのは、500ユーロ、1千ユーロと進んで出資してくれた50人ほどおマレンヌの漁師や漁業関係者だった。物資の交渉はヴェルディエが担い、マレンヌの漁師に電話でロープを大量に買うよう頼んだ。漁師は「日本のためなら」と賛同したものの、けげんそうだった。「かんでカキの養殖にそんなものが必要なんだ?」
フランスでは種ガキをカゴに入れて育てるが、日本は種ガキをロープに結わいて海に沈める。「はえ縄に使うような漁業用ロープでいいから」。説得してかき集めてもらった。第1陣の物資は10㌧に上った。だが、船便では間に合わない。輸送費はかかるが、空輸を選んだ。
その年の7月8日、浜で引き渡されたロープやブイは今も唐桑の海で活躍する。支援受け入れの先頭に立った漁師の畠山政則(63)は昨年11月、仏日海洋学会の招きで訪仏し、関係者にお礼を言って回った。唐桑では県内でいち早く、震災後3カ月ほどでカキ養殖の環境が整い始めた。だが、多くの漁師が再開へと踏ん切りをつけるには、もう少し時間が必要だった。(森治文)

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