4月12日 令和フィーバー報道も過熱

朝日新聞2019年4月6日37面:災害・不況・・平成リセット願望? 新元号「令和」が発表された1日、テレビ局は特番や情報番組などで長時間を割き、新聞社も号外や翌日朝刊で大きく報じた。過熱する報道の背景と課題を考える。テレビ東京を除く在京キー局とNHKは1日朝から情報番組やワイドショーなどで新元号の話題一色となった。発表時刻までタレントが新元号の予想を語り合ったり、AI(人口知能)の予想を紹介したりした。「新しい元号であります」。午前11時41分に菅義偉官房長官が発表した瞬間はテレ東も含む全キー局が生中継で放送。その後も多くの局がワイドショーや特番などで列島各地の熱狂ぶりを紹介した。
ビデオリサーチによると、テレビを見ている世帯の割合を示すHUT(総世帯視聴率)は、新元号が発表された午前11時台が42.1%で、前の4週間の平均と比べて19㌽高かった。全国紙はいずれも2日付朝刊1面トップで報道。「令和」の巨大な見出しが躍った。地方版を除く関連記事は読売新聞が15㌻、毎日新聞が12㌻、朝日新聞は11㌻、産経新聞は10㌻、日本経済新聞が9㌻と各紙が紙幅を大きく割いた。
社説では、読売は「おおらかな情緒を感じさる2字ではないか」と新元号を称賛し、「新天皇の即位と新元号の施行は、国民の心の持ちように一定の影響を及ぼすに違いない」と述べた。産経は「元号は、本質的に『天皇の元号』である」とし、「将来は制度を改め、閣議決定した元号を新天皇が詔書で公布されるようにしてもらいたい」と主張。一方、毎日は「新しい元号に意味づけをしていくのは、あくまでも国民である」とした。朝日も「元号への向き合い方は人それぞれである」。日経は「情報公開も重要だ」と指摘した。(いずれも東京本社最終版)。新聞各紙は号外も発行。読売は約103万部、朝日が約20万部、産経が約9千部。毎日新聞は取材に部数を回答しなかった。日経は発行しなかった。「メルカリ」などには号外が出品され、千円以上で取引されたものもあった。
「平成」発表時とは対照的なフィーバー。「天皇制と民主主義の昭和史」の著書がある河西秀哉・名古屋大大学院准教授(歴史学)は「自粛や崩御を経た平成への改元と比べ、今回は天皇崩御が伴わない。ネットで予想が飛び交うなど社会全体に明るい雰囲気があった」と指摘する。その上で「平成時代は大災害や不況、社会の分断が目立ったから、改元ですべてがリセットされ、大きく変わって欲しいという期待感が世間とメディアにはあったのでは」と読み解く。
「批評や検証、弱かった」指摘も 安倍晋三首相は1日、メディアに次々登場。NHKとてテレビ朝日には生出演した。NHKは「ニュースウォッチ9」で「歴史的決定を行ったこの方に来ていただきました」と紹介し、保守政治家の価値観が反映されたかなどと質問。日本テレビは「news zero」に録画で登場し、有働由美子キャスターが令和何年まで国を引っ張りたいかなどと尋ねた。
新聞では産経新聞が2日付朝刊で安倍氏の単独インタビューを掲載。「(元号決定に至るまで)大変深く悩む時間が長かった」といった言葉を紹介した。1日付の夕刊1面は各紙が新元号を発表した菅氏の写真を載せたが、読売新聞最終版は記者会見した安倍氏の写真を大きく載せた。政府が意見を聴いた「元号に関する懇談会」は、9人のメンバーのうち、メディア関係者が3人いた。情報法などを研究する早稲田大学学術院の波多江悟史講師(憲法学)は「ネット時代の今、新聞やテレビに求められるのは事実の紹介ではなく、批評や検証の役割だが、今回はそれが弱かった。元号にはもともと偽政者が時を支配するという意味が伴うため、首相の発言を報じる際は権力者に追随する結果にならないように、問題提起や批判的な視点をもつことが重要」と指摘。その上で「改元をめぐっては象徴天皇と政府の関係はどうあるべきか、保守層の動きは天皇の元首化につながたないかなど、論じるべき問題がたくさんある」と語った。
ある民放関係者は言う。「新元号発表はハロウィーンやクリスマスと同様、大型イベントだった。お祭り騒ぎに乗っかるのはテレビの性質だ。ただ背景を深く掘り下げる報道も必要で、そのバランスをもっと意識する必要があったかもしれない」(赤田康和、仲村和代)

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