4月12日 ランドバンク地方救う

日本経済新聞2019年4月6日夕刊1面:空き地・空き家を再生 街に新たな価値 空き地や空き家の拡大が各地で大きな問題になっている。特に地方では活用されないまま放置されがちで、地域の衰退を招くとの懸念が強まる。その解決の手法として注目を集めるが「ランドバンク」だ。空き地を集約し、道路を広げるなどして土地に価値を生む。日本では動き始めたばかりだが地権者、地域、自治体の三方良しにつながるか期待される。困り果てている」。仙台市に住む会社員、安蒜(あんびる)慶一郎さん(63)は山形県上山市の実家が悩みの種だ。亡くなった母親から相続して10年以上がたつが、冬に水道管が破裂して高額の水道代を請求されるなど管理に苦慮していた。老朽化で売却も賃貸もできず、奥まった場所にあるため「重機がはいらなら解体できないと業者に断れた」。無償譲渡したいと申し出た市からも断られ、打つ手がない状況にある。
実家よみがえる こんな上山市内の「動かせぬ土地」をよみがえらせようとNPO法人「かみのやまランドバンク」が3月に準備会合を開いた。同市や県宅地建物取引業協会、不動産学部のある明海大学(千葉県浦安市)などが近く法人登記。複数の空き家や空き地を、所有者の理解を得ながらまとめて再生するプランを主導する。安蒜さんの空き家も候補物件の一つ。現状は道路に接していないため、建設基準法により解体しても建て替えができないが、隣接する4つの空き家や空き地つなげれば道路に面し、まとまった土地にできるという。NPO理事長に就く地元の山形第一不動産の渡辺秀賢社長(44)は「それぞれは活用が難しくても集めれば価値が出る」と強調。城下町の市街地にあり、「若い人向けの住宅や店舗の需要も見込める」と期待する。市内の空き家は300以上。市建設課の鏡昌博係長(44)は関心の高まりから「最近は一人暮らしの高齢者が自宅の相談に来ている」とし、「早めに手を打てば街も変わる」と新たな取り組みの意義を語る。
米国で広がる ランドバンクは米国でスラム化した都市の再生手法として広がった。日本でも地方都市を中心に関心が高まる。成果を上げる先行例も山形県にある。NPO法人「つるおかランド・バンク」(鶴岡市)だ。2013年から様々な相談に応じ、100件以上の土地問題の解決につなげた。広瀬大治理事長(38)は「活用できない土地を抱える人の駆け込み寺になっている」という。
空き家4軒のうち2軒を解体し、近くの空き地も使って道路を広げる案件などを実現。「環境が良くなって若い人が映り住んだ例もある」(鶴岡市都市計画)。各地から視察が相次ぐ。鶴岡市にならい、静岡県掛川市では地元不動産関係者がつくるNPO法人「かけがわランド・バンク」が18年から活動を始めた。建築士の丸山勲理事長(46)は「街の衰退を知る我々世代が立ち上がり、活性化につなげる」と語る。
 所有者の権利調整難しく 事業の担い手も課題 ランドバンクはいまのまま個々では活用が難しい空き家や空き地の再生に有望視されている。山形第一不動産の渡辺社長は「利益がでるなら民間で流通する。荒れた家や権利関係が複雑な物件が残る」と明かし、人や投資を呼び込みむ新たな開発手法の必要性を指摘する。ただ、複数の所有者を説得し、理解を得るまでには時間と労力がかかる。佐賀市では官民が市街地で「Reー原っぱ」事業を進める。市が助成するNPOが空き地を借りて芝生を張り広場とする。住民が集まる場としてにぎわいを生みつつ、将来の開発の種地として生かし、ランドバンクに近い効果を担う。
誰が事業を担うかも課題となる。つるおかランド・バンクの広瀬理事長は「ボランティアでの活動には限界があり、行政のバックアップが不可欠だ」と語る。上山市のNPOに関わる明海大の小杉学准教授(45)は「地方だけでなく、大都市でもマンションの空き家で同様の問題が起きている」と指摘。「行政が相続や権利関係に踏み込んだ街づくりの視点で取り組む必要がある」と語る。(浅山章)

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