4月10日てんでんこ 養殖カキの春「3」恩義

朝日新聞2018年4月3日3面:かつて絶滅寸前だったフランスのカキ。救ったのは宮城産だった。 東日本大震災から2ヵ月後の5月末、殻付きカキのネット通販会社社長、斎藤浩昭(54)は仙台駅の改札口でロベール・ヴェルディエ(58)と初めて会った。フランス人のヴェルディエは学生時代の1980年から日本に滞在。銀行員を経て、現在はポジティブプラネットジャパンと名乗る、貧困層や零細企業向けに融資するNPO法人の役員だった。近くの喫茶店に移ると、カキ養殖漁師支援のため、母国で立ち上がった「お返しプロジェクト」の内容を斎藤に話し始めた。
カキはフランスで、クリスマスシーズンなどにはなくてはならないごちそうだ。生ガキにレモン汁をふりかけ、日本人の何倍にもあたる、平均して年200個ものカキを食べると言われる。ヴェルディエは子どものころ、2種類に大別されるカキの一種が「ジャポネーゼ」と呼ばれるのを不思議に思っていた。
謎は解けた。友人でフランス大使館(東京)に勤める経済参事官のエティエンヌ・ローランピエーグ(49)から「加にか復興支援ができないだろうか」と相談され、あれこれ調べたところ、フランスのカキの8~9割は宮城県にルーツがあることが分かったのだ。1960~70年代、フランスでカキに病気が広がり、絶滅寸前になった時、それを補うために日本から種(子ども)ガキが大量に輸入された。東北大学の研究者の指導の下、それを担ったのが宮城県のカキ養殖漁師。69年には1千万個の種ガキを贈ったという記録もある。フランスのカキ関係者はその恩を忘れていなかった。
支援の窓口となるヴェルディエにはつてがなかった。ところが5月、別の復興支援で岩手県に向かう途中、たまたま読んだ英字紙で、カキ養殖を支援する斎藤の記事を見つけ、すぐに電話をかけたのだった。「カキを海中につり下げるロープとブイがたくさんほしい」。斎藤は初対面でそう言った。そんなものは国内で手に入るんじゃないのか。ヴェルディエは意味がよくのみ込めなかった。「今はロープも手に入らない非常時です。太ければなんでもいい。ただし、7月上旬までに」。1ヵ月しかなかった。(森治文)

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