4月10日 変わる大学入試 試行調査終了

朝日新聞2019年4月5日3面:迫る入試本番残る課題 大学入学共通テストに向けた、2回目で最後の試行調査の採点結果が公表された。国語の記述式問題の正答率は上昇したが、1回目の試行調査で浮かんだ課題の多くが不安を抱くなか、「本番」は1年9カ月後に迫っている。(増谷文生、編集委員・氏岡真弓)
「国語、情報処理力に編重」 「問題の作成・実施方法の知見を得ることができた。しかるべく準備を、粛々と進めていく段階だ」 2回の試行調査を終え、大学入試センターの義本博司理事は、2021年1月に実施されるテストに向けて自信を見せた。共通テストは記憶した知識だけではなく、その知識を活用した「思考力・判断力・表現力」を測ることが目標だ。日常的な場面を題材に、資料から情報を読み取って答える問題が各教科にあり、国語と数学では記述式問題も導入する。
17年の1回目の試行調査は意欲的な出題が目立ち、学校現場からも「今の授業のままでは解けない」との声が出た。実際、国語の記述式問題のうち、最も長い80~120字の文章を書かせる問題は完全正解率が0.7%にとどまった。そこで、18年11月の2回目の試行調査では、文字数が同じ長さの記述式問題で引用すべき資料や、「書かなくていい要素」を具体的に例示した。完全正解率は15.1%に上昇し、センターは「解答条件の改善などの効果があった」として、本番に進めるとしている。ただ、正答率の上昇を優先した結果、テストの性格が変わってしまう懸念がある。「国語教育の危機」の著書の紅野謙介・日本大文理学部長は「記述式で見ようとしたのは、考えを自由に表現する力だったはず。『情報処理力』しか問えない問題を、コストをかけて導入する意味があるのか」と疑問を投げかけている。
試行調査についてセンターがまとめた報告も、短時間に大規模採点する必要を踏まえ、「(国立大の2次試験などの)戸別選抜での記述式のように、自分の考えをより自由に発展させて表現するような問いはなじまない」と記した。そのうえで国語の記述式問題は「情報を整理して考えを構成する力」を問う点で意義がある、としている。数学の記述式も困難を抱えている。1回目の試行調査は出題した3問の正答率が全て1割未満で、約半数の答案は無解答だった。2回目は数式だけ、または短い文章だけを求める内容に変更したが、やはり正答率は3.4~10.9%で、無解答率も高かった。センターは、「マークシート式問題を含めた分量が多すぎた」と分析しており、本番では日常生活などを題材にした問題を減らす方針だ。
 誤字・脱字に甘い採点批判 センターは大量の答案を公平に処理するため、国語の記述式問題は複数の正答条件を設定し、一致するかどうかで採点する。また、改革の過程で「1点刻みの入試からの脱却」が求められたこともあり、成績は「段階別のレベル」で大学などに提供する。試行調査では3問の記述式問題の解答を「完全正答」から「無解答など」なで4段階に分け、最も長い解答を求める問題の比重を1.5倍にしたうえで、5段階の「総合評価」に落とし込んだ。今回は受験者の14.5%が最高の「A」評価を受けた。「誤字・脱字」は厳しくは問わない。センターは今回、「共有」を「供有」と書いたり、「向かって」を「向って」と記したりした解答は、文章や文脈が条件に合っていれば正答とした。「記述式問題は思考力などを問うのが主な目的のため、漢字の正確な記述より内容面を重視した祭典を行う」と判断したためという。これに対し、静岡県立掛川西高校で国語を教える駒形一路教諭は「表現力は、正確に書くことから始まるのではないか。採点の効率を重視するあまり、表記の基準を甘くするのは誤り」と指摘する。テスト理論が専門で、東京大高大接続研究開発センター長は、5段階レベルの仕分けに否定的だ。国立大学協会は昨年決めた方針で、記述式問題の結果はマークシート問題に加点し、最高点の目安は「全体の2割程度」とした。単純計算すると50点の配分で、段階が一つ変わると10点上下することになる。南風原氏は「解答のわずかの差や採点のぶれが、10点差につながるおそれがある」と語る。
問題減少 本末転倒 中央教育審議会長として高大接続改革の議論を主導した安西祐一郎氏の話 文武科学省や大学入試センターは、入試として適切な問題を出そうと努力していると思う。ただ、正答率が低いのであれば、それは問題が不適切だからではなく教育改革が進んでいないからだ。試行調査の正答率が低すぎるからといって、問題量を減らして易くするのは本末転倒ではないか。私は、受験生のほとんどが10点であっても問題を変えず、解けるようになるよう、授業を変えることを目指すべきだと思う。昔ながらの教育ではこれからの時代に求められる、あふれる情報から何が大事かを理解して明快に表現し、人生を切り開いておく人材は育てられない。「入試改革ではなく教育改革だ」と言ってきた理由はそこにある。共通テストは50万人が一斉に受け、出題も採点も足かせがある。だが、大規模試験だからこそ、教育を変える契機になる。これ以上妥協すべきではない。

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