4月10日 オトナになった女子たちへ 益田ミリ

朝日新聞2019年4月5日25面:悩める「あたふた族」 落ち着いているオトナは、かっこいい。わたしが思う落ち着いたオトナとは、人の話を最後まで聞ける人である。よくいるのではないか、相手が話し終わらないうちから話し始めてしまう人。ああいうのはどうも落ち着きがない。あたふたして見える。「あたふた族」と名づけているのだが、なにを隠そうわたしもあたふた族の一員なのであった。あたふた族同士がカフェでお茶などするとたいへんである。会話が重なりつづけるので「間」というものがない。あたふた族は「間」を作らないのが会話だと思っているフシすらある。
間は大切だ。今気づいたが人間には「間」という文字が入っているではないか。音楽だってそうだ。間奏というものがある。あれはやはり必要だからあるに違いない。しかしながら、あたふた族のわたしは、カラオケのときの間奏にも内心あたふたしている。間とは時間。すなわち間もまた人生。みなをわたしの間奏などで待たせていると思うと気持ちが急く。そういえば、一緒にカラオケへ行ったあたふた族の友人が、「間奏長くてゴメン!」と局の最中に詫びていたことがあったが、同族なので彼女の気持ちがよくわかる。あたふた族の習性は言語を変えてもそのままらしい。習い事の英会話レッスンで、わたしが先生にしょっちゅう言われる単語は「プリーズ」。わたしが間を無視してあたふた話しだすせいで、先生との会話が重なることが多々ある。そんなとき先生は、「プリーズ(お先にどうぞ)」と譲ってくださるのだが、譲られたところで英語がスラスラ出てくることもない。先生は不思議に思っているだろう。
「この人、英語わかんないのにめっちゃしゃべってくるな・・」と。年齢を重ねれば自然に落ち着いたオトナになれると思っていた。どうやらそうではないようだ。わかっちゃいたが努力が必要だった。あたふたしたくない。わたしはあたふた族から足を洗いたい。そうはいっても、急にあたふたしなくなったら、「なに、風邪?」などと心配されるに違いなかった。(イラストレーター)

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