30日 池上彰の新聞ななめ読み

朝日新聞2017年7月28日15面:新聞の責任 事実を刻む歴史の証人 新聞は新しい視点や知識を与えてくれます。忖度についての新しい視点を教えてくれたのは、日経新聞の7月24日付朝刊でした。世界史に造詣の深いライフネット生命保険創業者の出口治明氏の「忖度させるのは誰か」というエッセーが掲載されています。
このところしばしば出てくる「忖度」という言葉。上の意向を忖度することを「いかにも日本的」と評する人もいるけれど、「世界の歴史を学ぶと、それは日本特有の文化ではなくリーダーの資質に起因する世界共通の現象だと分かる。忖度やゴマすりは、それをよりとするリーダーがいなければ行われない。上に立つ者が理路整然としていて、手厳しい指摘や忠告を受け止める度量さえ持っていれば、忖度など存在するはずがないのだ」と出口氏は指摘し、忖度を存在させなかった7世紀の唐の皇帝・李世民の時世を取り上げています。歴史に学ぶとは、こういう視点なのでしょう。
翻ってわが国では・・・などと付け加えることはありません。ここでは新聞報道の在り方を見ましょう。
7月10日、国会で前川喜平・前文部科学事務次官が参考人として出席しました。前川氏については、読売新聞が5月22日付朝刊で、東京・歌舞伎町の出会い系バーに通っていたとの記事を掲載していました。
これについて議員に問われた前川氏は、昨秋に杉田和博・官房副長官から注意を受けていたことを明らかにした上で、「官邸と読売新聞の記事は連動しているというふうに感じた。私以外でも行われているとしたら、国家権力とメディアの関係は非常に問題がある」と語った。と7月11日付朝日新聞は報じています。
では、毎日新聞はどうか。同日付の記事で、「(官邸の動向と)読売新聞の記事は連動していると主観的に感じ取った」という前川氏の発言を紹介しています。さらに詳報でゃ、以下のように取り上げています。「昨年秋に杉田和博副官房長官から事実関係について聞かれた。そのことが読売新聞に出たことを問題にすべきだ。私は官邸と読売新聞の記事は連動していると主観的に感じ取った。私へのメッセージだと感じた。この国の国家権力とメディアの関係は非常に問題がある。もしそれが横行しているとしたら国民として看過できない問題だと思っている」
さあ、前川氏から、これだけ批判された読売新聞です。いったいどのような記事になっているのかと思って、同日付の読売新聞を読んだんですが・・・。
そこにも、この部分の前川発言が掲載されていません。本文の記事はもちろん、「国会論戦の詳報」というページにも、一言も出てきません。これでは「詳報」ではありませんね。
新聞とは、日々のニュースを刻むもの。それはやがて「歴史の証人」になります。新聞が一言も報じなければ、事実がなかったことになってしまいます。他の新聞やテレビの報道で知ってくれとでもいうのでしょうか。新聞で報道された内容がやがて歴史になるという、歴史への責任感がないのでしょうか。
一方、この日の国会には、愛媛県への獣医学部誘致を進めてきた加戸守行・前知事も出席しました。読売新聞は、加戸氏の発言として、「特区が岩盤規制に穴を開け、ゆがめられた行政が正された」と評価していることを伝えています。
そころが、この加戸発言を、朝日も毎日も本文の中で取り上げていません。詳報のページには、両紙とも加戸発言を丁寧に紹介し、読売よりも、むしろ分量は多いのです。それを読むと、加戸発言は、愛媛県に獣医学部を新設してほしいと地元は以前から要望していたという経緯が述べられています。
これを読むと、加計学園の今治進出は、地元の悲願が実現したものという印象を受けます。今回の一連の出来事を、愛媛県側から見ることで、物事が立体的に見えてきます。朝日も毎日も、詳報で伝えているといえ、本文でもきちんと伝えるべきだったのでないでしょうか。◇東京本社発行の最終版を基にしています。

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