3月9日てんでんこ 祭人「5」けんか

朝日新聞2019年3月5日3面:「リヤカーに太鼓を積んでたたこう」。伝統の形にこだわった。 東日本大震災の津波で市街が丸ごと被災した岩手県陸前高田市では今も、被災地で最大規模のかさあげ工事が続く。900年余り続くとされる「けんか七夕」は同市気仙沼町今泉地区の伝統の祭りで、約4㌧の山車をぶつけあう。復興工事の影響で一時、地区を離れて催された。かさ上げされた地元に戻れたのは昨夏で3年ぶりだった。半年が過ぎ、早くも今夏の準備ができる。でも、保存連合会長、佐々木富寿夫(65)の表情はさえない。「今後を考えると不安で」。震災から昨夏までは駆け足だった。
地区は気仙川河口そばの右岸にある。「奇跡の一本松」に近く、川をさかのぼる津波に襲われた。600棟あった家々はほぼ根こそぎ持っていかれ、山車も流された。消防団員や市職員のメンバー2人も殉職した。村上徳彦(51)は当時、地区にある町内会の青年部長への就任が決まっていた。その年の祭りの仕切り役の一人だ。祭りをやれるのか、やってもいいのかと悩んだ。犠牲になった仲間のため、灯籠流しも考えた。だが、村上は、山車に太鼓や笛の演者を乗せて動かす伝統の形にこだわった。何より津波で祭りを途切れさせたくなかった。「山車がなくても、リヤカーに対抗を積んで、たたこう」
その後、地区に4基あった山車のうち高台に置いていた1基が残っていることがわかった。山車のぶつけあいはできないので、前と後ろの綱を引き合って競うことにした。「負けない」。村上は白い布に大書して掲げた。祭りのかけ声「よいやさぁ~」も書き添えた。山車に犠牲になった仲間2人の写真を載せた。
神社、気仙川の対岸・・。毎夏、会場を転々と変えながら続けた。支援で山車を新造してけんかも復活させた。地区外の仮設住宅に住む人らには、帰還へのここの支えとなった。村上は、祭りを守ったことにホッとする。だが、佐々木と同様、今後を考えると安心はできない。「休止も」という弱気が頭をもらげてくることもある。「でも震災に負けたくない」。気持ちは揺れ続ける。(山浦正敬)

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