3月8日 見張り塔から 津田大介さん

東京新聞2018年2月27日4面:社会分断もたらす責任自覚を この一カ月、新聞や通信社、テレビといった既存マスメディアを中心に「炎上」した。1月末に話題を集めたのは、産経新聞那覇支局長が沖縄二紙を攻撃する論調を張った昨年12月9日の交通事故の記事が、事実に基づかないフェイクニュースだったことを事故当事者や県警への取材で明らかにした琉球新報の1月30日の記事だ。報道を受け、再検証を行った産経新聞は2月8日、自らの取材不足を認め謝罪。ウェブ上の記事も削除した。
同紙は1月4日にも、沖縄県が発表した県民経済の資料で観光収入を過大に発表し、基地の恩恵を少なく見せることで反米に利用しているという趣旨の記事を掲載したが、取り上げたデータが3年前の県民経済計算にくっついている参考資料のなかの一カ所にすぎなかった。正式なデータではなく、県統計課が利用にあたって注意を呼び掛けていたものだったため、沖縄県を不当に攻撃する目的でデータの解釈をゆがめたミスリーディングな記事として多くの批判を浴びた。しかし、こちらの記事はいまだ削除されていない。
マスメディアの誤報という意味では、京都大学iPS細胞研究所の論文捏造問題に関連して、共同通信が1月25日に「山中氏、科学誌創刊に深く関与か、京大、iPS研の論文不正」という見出しの記事を配信したことがネットで猛批判を浴びた。批判を受け、共同通信はウェブサイトの記事を同じURLで修正。このこともさらなる批判を招いた。新聞記事は版によって同じ記事でも少しずつ内容が変わる。そのやり方はウェブでも援用されており、同じURLでも記事内容が時間によって変わることはあるが、あくまでそれはマイナーチェンジ。今回のケースは明らかに炎上を収めるため、報告なく大幅に記事内容を変えたため、批判を浴びることとなった。
テレビの倫理も問われている。国際政治学者の三浦瑠麗氏がフジテレビ系情報バラエティー「ワイドナショー」で「北朝鮮のテロリスト分子(スリーパーセル)が日韓に潜んでいる」と発言、とりわけ大阪が危険だとの認識を示したことがネット上で反響を呼んだ。発言自体は、日本社会に北朝鮮のスパイが潜んでいる危険性を指摘した他愛もないものだが「大阪がいまヤバいと言われている」と、具体的な根拠を示すことなく、現在の危険性示したため、大阪に多い在日コリアンに対する差別扇動ではないかとして、多くの批判が寄せられた。
影響力の大きい全国地上波の番組で危険をあおることがどのような社会的効果をもたらすか、メディアは自覚的でなければならない。その意味で生放送ではなく収録番組であるにもかかわず、十分に内容を精査せず放送したフジテレビの責任も免れない。
これら3件に共通するのは、事実よりも政治的主張や経済的理由(視聴率など)によって、自分たちの報道したい内容を優先させ、社会に大きな断絶をもたらしているということだ。一言で言えばメディアの倫理という問題に集約される。このことを今回の三者が認識しない限り、同様のケースは今後も頻発するだろう。

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