3月8日 サザエさんをさがして おおつとやまがた

朝日新聞2019年3月2日be3面:カツオが解いた難問は あー、あの事件ね。と一読しておわかりの方はどのぐらい。いるだろう。世間の耳目を引いた出来事ほど、風化するとわびしい。1954年6月、保安庁(現・防衛省)技術研究所会計係長夫婦が銃で武装した一味に脅され、約1900万円分の小切手などを奪われた。容疑者たちは97万円を現金にして行方をくらませた。主犯の大津健一は元警察予備隊(現・自衛隊)員で五輪選手級の腕前だったという。事件は新聞紙面を連日にぎわせ、発生から40日目に大津は大分県内の温泉宿で逮捕された。これが「カービン銃ギャング事件」だ。余罪が次々と明るみに。東京都保谷町(現・西東京市)のマンホールで52年に男性の遺体が見つかった。この熱海の貸金業を大津と共に殺害したのが、山県(山形)源太郎だった。波平が「そんな話」を嫌うのも無理はない。
国防組織を狙った強盗事件は、既存の道徳にとらわれないアブレゲールな時代を物語る。元女優の愛人を連れ、女装や学生服で逃げる大津の派手な行動は、いまなら劇場型犯罪と呼ばれただろう。なんと大津の逮捕から2週間後にはセミドキュメンタリー映画「恐怖のカービン銃」が封切り。
無名の若手だった天知茂が大津役で初の主役を務めている。DVDで見ると、急ごしらえとあって46分と短く、ギャングたちの心理描写はさっぱりだが、逮捕、連行される容疑者たちを見物するやじ馬の殺到ぶりが関心の高さを示す。波乱万丈はまだ続く。大津は一審で死刑を宣告されるも、獄中で法律を勉強して二審は弁護士をつけずに自ら証人尋問し、無期懲役に減刑された。78年に仮出所し、週刊誌につづった自伝が映画「さらば、わが友 実録大物死刑囚たと」(中島貞夫監督)に。大津の共犯役で鋭い眼光を放っていたのは、若き日の役所広司だ。が、記者の興味は別にある。
カツオたちが口にした「おおつとやまがた」が答えとなるような地理の出題とは何ぞや? 滋賀県と山形県の県庁所在地を指すことは間違いないだろう。この2市の共通点を探ろう。思いつくのは「別の府県庁所在地と隣接しているのは」(大津市は京都市、山形市は仙台市)だ。でも、これは問題を作りにくい。「政令指定都市と隣接する県庁所在地は」だと横浜市(川崎市と)、大阪市(堺市と)、佐賀市(福岡市と)が加わる、さらに不都合なのは、54年当時は山形市と仙台市が隣接していないし、指定市はその2年後に始まる制度だ。
漫画の地図には線路が描かれているので、当時の時刻表を調べてみた。「東京から特急で9時間以内に着く県庁所在地を遠い順に二つ」は? だめだ、岐阜市の方が山形市より遠いなあ。筑波大学の井田仁康教授(地理教育)から、「東京から直通の列車で鉄道路線を通って5番目の県の県庁所在地は」という作問をいただいた。これなら文句なしか。いや、これだと「仙台市や秋田市、富山市なども正解となる」ようだ。ほかに出題例はないか、おいおい考えることにする。大阪府教育大学の峯明秀教授(社会科教育)は「風刺画からテキストを読み解くことは、新学習指導要領でねらう社会の見方・考え方の技能を育てる鍵」と指摘する。新聞の漫画は金脈かもね。(井上秀樹) 紙面には1954年8月9日朝日新聞朝刊にサザエさんの4コマ漫画が掲載しています。

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