3月6日 見張り塔から ジャーナリスト・津田大介さん

東京新聞2019年2月28日4面:メディアの泣きどころ熟知 経営難 質の高い報道を 現政権とメディアの対立は深まるばかりだが、政権が強気の姿勢を崩さない背景には、高い支持率だけでなく、ネットの影響力の増大がある。気に入らない報道があれば、政治家が自らブログやツイッターで「反論」することで、支持者たちにメディアを攻撃させることが可能になった。自民党担当記者クラブ(平河クラブ)を通さず、ネットメディアのインタビューに答えた小泉進次郎議員や、選挙直前に自らを褒めたたえてくれるネット番組に出演する安倍首相など、政治家側が既存メディアをスルーして大手ネットメディア経由でメッセージを発信する事例も増えた。記者クラブの壁があり、通常のルートでは情報を取れないネットメディア側は、政治家の発信したい内容をそのまま発信することで「スクープ」が実現し、ページビューを増やすことができる。たとえそれが政治家のプロパガンダに加担することであっても、既存メディアに対抗するにはやむなしという判断なのだろう。急激な新聞の部数低下もその状況に拍車をかけている。日本新聞協会のデータによれば、2017年から18年にかけて日本の新聞は222万部減少。現在の発行部数は39.901.576部で、ピーク時と比べて4分の3まで落ち込んでいる。
1月25日には、経営難を理由にPR専門の会社に買収され、政権に近い人脈を持つ人間が取締役編集主幹として送り込まれたジャパン・タイムズで慰安婦報道や政府に対する報道のスタンスが変わったことを詳細に伝えるロイターの報道もあった。個人的に気になっているは、マスメディアで今年10月の消費税増税対策として政府が予定しているポイント還元について、その広報・宣伝費に通常の政府全体の広告予算費の5倍となる400億円を予定しているという(2月15日テレビ朝日news)。政府広報として、この400億円の多くがテレビや新聞に流れることは疑いがなく、事実上のメディア懐柔策と言ってもさしつかえないだろう。残念ながらこの「異例な広報予算」に対する批判的な報道は、既存メディアからは見られない。いまの政府はメディアの泣きどころを実によく熟知しているということだ。
経営難にあえぐあらゆるマスメディアは、ここ数年例外なく取材費を削減しており、そのことが報道の質を下げ、政治家やネットから批判される隙をつくっている。この悪いスパイラルを断ち切らない限り、メディアが負け続ける状況は永遠に続く。英国の老舗高級紙「ガーディアン」も近年部数と広告費の減少に悩んでいるが、2016年英国で行われたEU離脱を巡る国民投票以降、報道の必要性を感じた読者たちから共感の寄付が多く集まり、今年には黒字転換すると見込まれている。ネット経由で毎月定期的に寄付を行う読者が30万人以上存在する。ガーディアンの成功は日本の新聞にとって一つの希望だが、それも質の高い報道あってのこと。厳しい状況下でいかに踏ん張り、質の高い報道を実現するか。この原点に立ち返れるかどかうかが改めて問われている。
*この批評は最終版を基にしています。

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