3月5日てんでんこ 祭人「1」移植

朝日新聞2019年2月27日3面:東日本大震災の被災地から阪神大震災の被災地に。虎舞は進化する。 1月、大阪市内のホールであったアイドルグループ「ゆるゆるモ!」のライブの終盤、スモークの中から2頭の「虎」が登場した。「虎舞」と呼ばれる、三陸に伝わる航海の安全や大漁を祈願する郷土芸能だ。基本は、笛や太鼓に合わせ、獅子舞のように2人1組で虎の頭や胴幕を操り、腰を低くして地をはうように動く。だがこの日は、赤や青の光がまばゆく交差する中、ロックに乗って、胴幕の中で肩車して立ったり、テンポよく足を左右に高く上げたりして演じられた。
演者は、昨秋に活動を始めた「阪神虎舞」。阪神大震災の被災地、神戸市長田区を中心に活動するプロダンサーら7人だ。東日本大震災の後、被災者自らが虎舞を披露して地域を元気づける姿に心を動かされた民族学者、橋本裕之(57)は、阪神タイガースの地元に「移植」してみようと考えた。岩手県大槌町の団体「城山虎舞」に依頼し、門外不出の技法を直接伝授してもらった。大槌では男性だけが虎頭をかぶるが、ダンサーには女性もいる。ダンサーらはおおつちの秋祭りも見学して原点を知ろうとしたが、城山虎舞の総会長、菊池忠彦(53)は「コピーではなく自由に進化させてほしい」と告げた。
城山虎舞も大槌では最も新しい団体で、少しずつ踊りを魅力的に変えて人気を集める。「伝えるためには変化も必要」との考えただ。阪神虎舞のメンバー、浅野吉英(60)は元美術教師で郷土芸能にも関心がある。「阪神大震災では震災で芸術的な創造物が一瞬でがれきとなったのを見たが、芸能は残った」とはいえ、いまは活動の土台はなく、方向性も見えていない。橋本は「披露できる場を探し、一つ一つをこなすうち、自然に根付いてほしい」と話す。
今年3月10日、東日本大震災の犠牲者の慰霊のため、大阪市にある少彦寝名神社で虎舞を奉納する。張り子の虎がシンボルの神社だ。「都会が舞台なら、プロのダンサーが担う阪神虎舞の特徴が生かせる展開もある。それによって、震災の記憶の風化を食い止める役割も果たすこともできる」 (岩田恵実)
=文中は敬称を略します ◇東日本大震災から8年。三陸の郷土芸能や風習はどんな役割を果たし、どう変容しているのか。津波常襲地の岩手から掘り下げる。

 

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