3月30日 日曜に想う 編集委員 曽我豪

朝日新聞2019年3月24日3面:決め付け嫌う18歳の政治観 いまどきの若い者は、とは言えない。全国各地の大学に呼ばれて政治の話をする。以前は質疑応答の時間をとってもなかなか声はあがらず白々とした空気になった。それが今や、ニュースの背景にあるものをただす声が続き、朝日新聞への注文をぜひとでも言おうものならチャイムが鳴っても挙手は止まらない。リアクションペーパーというらしいが学生はみな感想文を書いてくれる。個々の声は個人情報なので直接引用はしないが、総じて感じるのは、決め付け型の言論に対する極めて強い拒否感である。
野党は反対だけだと聞く耳持たぬ政権にも、政権をただ完全否定するだけの野党にも、等しく懐柔的だ。その上で、野党にも自民党のポスト安倍の面々にも明確な対案が感じとれないから消去法で現政権支持だと説明する声が少なくない。既存の社会の物差しをうのみにせず自分の感性に合った答えを探す。昔のような反体制、反権力でなくとも、若者らしい現状批判の精神は健在だと感じる。その目はメディアにも応分に注がれ、政権への否定と肯定で両極化が進めば現実政治の分断状況が加速するだけだといった耳の痛い指摘にもつながる。自分たちの世代に対する決め付けにも敏感だ。結局、就職状況が良いから若者は保守化し安倍政権支持なのだろうとする大人の側の論理には、どこの大学でも必ず批判や怒りの声があがるのだ。
大阪市の私立上宮高校教員の田中智和さん(45)が、18歳選挙権の導入された2015年から毎年秋に同高の3年生を対象にした政治意識・知識調査を続けている。18年は私立文系コースの169人に調査した。安倍晋三内閣の支持は堅調だが比較優位に過ぎないことが分かる。17、18年は内閣支持は3割程度後半から半ばまで推移し、不支持は1割台前半だった。ただ1番の多数は「わからない」で、18年には半数を超えた。18歳の投票が可能になって以降も政治への関心はなかなか定着しない。「非常に」と「ある程度」を合わせた「関心がある」との答えは秋に解散・衆院選のあった17年には53%で半数を超え、「あまり」と「全然」を足した「関心がない」を上回った。ところが大きな選挙のなかった18年には逆転し、「関心がある」が36%で「関心がない」が64%。普段から政治への関心を持ち続けることの難しさが浮かぶ。18歳のリアルは根源的な課題に表れる。「投票に行くことは有権者の義務である」との意見に「どちらかといえば」を含めて「そう思う」が15年も75%程度。だが「自分に政府のすることに対して、それを左右する力はない」には、童謡に「そう思う」が15年は66%で18年は72%だ。田中さんは「若い世代は義務感と無力感がないまぜになっている。高校、大学で継続的な主権者としての政治教育が必要です。このままではますます政治に冷めてしまう」と話す。
田中さんは17年から、18歳投票を踏まえて、若者の生活や経済状況が今後どうなるか、も聞き始めた。18年は「良くなる」が33%、「悪くなる」が8%、そして「変わらない」が58%だった。18歳は来月入社式の直後に統一地方選がある。改元を経て夏休みの頃には参院選だ。平成にはなかった衆参同日選かもしない。結果次第で政権交代の機運が高まり、あるいは改憲の国民投票が行われる可能性もある。大人への階段の一歩目でこの国の未来を左右する重い選択を強いられる、いや、行える世代なのだ。若い世代の支持取り付けは正当にとり一番の未来への投資ではないのか。しかも幸運なことにその世代は決め付け型の政治を嫌い、既存の与野党への評価も経済の未来予想もなお態度保留の姿勢が鮮明だ。ポピュリズムには流れず、建設的な現状刷新の努力を地道に続ける者にこそ、共感の目を送るに違いない。未発掘の宝の山がそこにある。本気でとりにゆかないなら、政治家をはじめいまどきの大人は本当にどうかしている。

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