3月29日 瀬戸際の防衛産業「下」

朝日新聞2019年3月23日9面:業界再編・輸出 旗振る政府 先月22日、都内の日本航空宇宙工業会に、三菱重工業や川崎重工業、スバルなど日本の防衛大手10社の幹部が顔をそろえた。日本政府が導入をめざす次世代戦闘機の受注に向け、開発スキーム(枠組み)を話し合う内輪の研究会だった。「新会社についても検討する必要がある」「今まで通りのスキームでいいとは認識してしない」 そんな意見が相次いだ。10社は次世代戦闘機の開発に特化した新会社を共同出資で設立する検討を進めることになった。各社に散らばっている人材や技術をひとめとめにすることで、欧米企業との受注競争を有利に進めるねらいがある。
日本ではこれまで、戦闘機などの大きな装備品は、「プライム企業」と呼ばれる大手が単独で受注し、後から仕事を各社に割り振るという受注方式が取られてきた。それが今回、将来の再編も視野に新会社設立を検討することになった。その裏には、政府の働きかけがあった。昨年は、今後5年間の防衛費の大枠を示す「中期防衛力整備計画(中期防)」の改定年だった。それにあわせる形で、内閣官房国家安全保障局(NSS)では、日本の防衛産業のあり方を話し合う会合が極秘に何度も開かれた。日本の防衛産業の市場規模は約1.8兆円。欧米の防衛大手1社の売上高にも満たない。これまでは、防衛省が各社に仕事がいくように装備品を分割発注してきたが、技術もコストも勝る欧米の輸入品が増える傾向が顕著になり、国内では事業の継続を断念する企業も出ていた。
昨年7月のNSSの会合には、防衛省などの常連省庁とは毛色が違う経済産業省が呼び込まれた。出席した同省の畑田浩之航空機武器宇宙産業課長は、民間航空機の生産で培ったノウハウを戦闘機の開発にもいかすことで、生産コストが下げられるのではないかと提案。防衛装備庁の幹部らに、防衛産業の効率化を進めるべきだと訴えた。水面下の議論を経て、昨年末に閣議決定された中期防には、国内防衛産業の「再編や統合」の必要性が初めて明記された。
政府が念頭に置くのは、再編を繰り返して巨大化してきた欧米企業だ。米国では冷戦終結後の1993年、国防総省が国内の防衛大手15社の経営トップを招いた夕食会で防衛予算の削減方針を伝え、自主的な再編統合を促した。「最後の晩餐」と呼ばれる会合をきっかけに、米国では業界再編が一気に進んだ。それに対抗するため、欧州でも国境をまたいだ再編統合が加速した。出遅れた格好の日本の業界には焦りもある。ある日本の企業幹部は「防衛部門は利益率が低く、株主に事業を続ける説明がつかない」とこぼす。別の企業幹部は「将来的には欧米のような再編が必要になる」と話す。
国内各社は長年、制約を課されてきた。武器の輸出を原則禁じてきた「武器輸出三原則」や、防衛費を国内総生産(GDP)の1%以内に抑えてきた歴史がある。だが、政府は14年、武器輸出三原則を緩和した。一定の基準を満たせば防衛装備品の国際的な共同開発や生産ができるようにして、装備品輸出に道を開いた。国内大手のある幹部は「どういう基準でどんな物が輸出できるのかよく分からない。政府が旗を振っていも、民間企業として装備品をどんどん輸出しようということにはならない」と漏らす。「武器商人」と言われることも避けたいという思いもある。防衛産業の立て直し向け、再編や輸出へと旗を振る政府。企業は難しい判断を迫られている。(笹井継夫)

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

ご予約・お問い合わせはお気軽に

Tel0120-740-276

〒352-0011 埼玉県新座市野火止8-14-29

ページトップへ戻る