3月28日 瀬戸際の防衛産業「上」

朝日新聞2019年3月22日4面:戦闘機開発 欧米が攻勢 東京都心の皇居・半蔵門に面した英国大使館。その歴史ある洋風建築に、三菱重工業や川崎重工業など、日本の戦闘機開発を担う大手11社の担当者が集められた。館内では欧州の防衛産業を支える大手4社の幹部が待ち構えていた。昨年11月のことだ。「顔合わせ」という名目で日英両政府が呼びかけた会合だったが、実態は日本に戦闘機開発などで売り込みをめざす欧州企業のPRイベントだった。
英国の防衛関連大手BAEシステムズのアンディ・レイサム上級副社長が、英国の次世代戦闘機の開発計画を説明した。人工知能を搭載した無人機と連携して飛行する最新鋭の戦闘機。ウェアラブル端末を身にまとったパイロット・・。SF映画さながらの最新鋭の機能をスクリーンに次々と映し出すと、レイサム氏は「日本と技術開発を進め、日英の次世代戦闘機に適用したい」と、日本企業に共同開発を持ちかけた。
英側の狙いは、にHン政府が2030年代に導入をめざす次世代戦闘機開発への参画だ。実現すれば兆円単位のビッグビジネスになるだけに、働きかけは欧州勢に限らない。防衛産業の世界最大大手、米ロッキード・マーティンと同2位の米ボーイングも昨年、日本の防衛省にそれぞれ次世代戦闘機の開発案を示した。米軍の主力戦闘機に改良を加えた戦闘機開発などを売り込む。冷戦終結や00年代後半の金融危機を受け、自国の防衛費削減に見舞われた欧米の防衛関連企業は、日本など海外市場への売り込みを強めてきた。最近では「バイ・アメリカン(アメリカ製品を買おう)」を掲げる米トランプ大統領も、首脳会談で安倍晋三首相に直接、米国の装備品の購入を求めた。日本政府関係者は「米政府は装備品輸出を安全保障戦略の一環として、米軍などをあげて日本に売り込んでいる」と指摘する。
売り込みの成果は明らかだ。日本の防衛予算にあける装備品購入などの物件費に占める輸入の割合は、11年度の7.4%から、19年度には27.6%に達する。同盟国である米政府からの調達(FMS)はこの間、16倍超に急増した。日本企業は海外勢の動きに危機感を募らせる。「零戦」をはじめ日本の戦闘機開発を担った三菱重工も、その一つだ。「国内産業にとっては厳しい。あまりにFMSが増えると、サプライヤー(調達先)が撤退してしまう」昨年6月の事業戦略説明会で、担当の阿部直彦執行役員は窮状を訴えた。日本勢も次世代戦闘機の開発を主導することをめざすが、欧米勢がたちはだかる。欧米大手の防衛部門の売上高は1社で年2兆~4兆円なのに対し、日本勢は数千億~数百億円。開発にあてられる資金力で大きな差がある。防衛省が過去に装備品の国産化方針を打ち出し、発注を国内各社に振り分ける「護送船団方式」を推し進めてきたことも背景にある。
護送船団方式は、日本の防衛産業の高コスト体質にもつながった。「分散投資の責任はだれが取るのか。投資効率が悪すぎる」。昨年4月、財務省の審議会で、同省の内野洋次郎主計官は不満をぶちまけた。日本では長年、三菱重工は戦闘機、川崎重工は輸送機とすみ分けてきた。生産設備や技術が分散されたことなどから、川崎重工などが製造する国産のC2輸送機の価格は、米国の最新鋭のF35戦闘機の2倍にのぼる。八方ふさがりの状況に追い込まれ、国内の大手10社の幹部が先月22日、都内に顔をそろえた。 国内外からの圧力によって転換を迫られる日本の防衛産業の現状を2回で伝えます。(笹井継夫)

 

 

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

ご予約・お問い合わせはお気軽に

Tel0120-740-276

〒352-0011 埼玉県新座市野火止8-14-29

ページトップへ戻る