3月27日 オトナになった女子たちへ 益田ミリ

朝日新聞2019年3月22日21面:ナマの不思議 お相撲を一回ナマで見てみたい、と母が言っていたのをふと思い出す。自転車に乗って近所のコンビニへ。レジ横にあるチケット販売機の画面をピッピッと押していくと、大相撲三月場所のイス席を入手することができた。三月場所は地元の大阪である。さて、当日。会場の入り口にはたくさんののぼりがなびいた。中に入ると、我々は「わっ、すごい!」と声をあげた。テレビで馴染みの世界が目の前に現れると心が弾むものである。
そういえば、以前、芥川賞・直木賞の記者会見を見に行ったことがある。担当の編集者が出席するというので連れて行ってもらったのだ。受賞者の発表後、すぐに記者会見があるので、会場の帝国ホテルには関係者らしき人が大勢いた。わたしたちは1階のカフェでパンケーキを食べつつ待機。帝国ホテルの「インぺリアルパンケーキいちご添え」は、年に1度は食べたくなるふっわふっわのパンケーキである。食べ終わる頃、編集者のスマホに選考結果が届いた。会場へと急ぐと、目の前にはあの金屏風。わたしは心の中で言った。「わっ、すごい」。映像で知っている世界を前にすると、自分が薄くスライスされ平面に貼り付けられたような不思議な感覚にもなる。記者会見は思っていた以上に長かった。ひとり30分近くある。その時、芥川賞を受賞された高橋弘希さんは、はいているズボンについての質問なんかも受けていた。
質問する側の記者の緊張している様子も伝わってきた。わたしの前に座っていた若い記者は、質問をしようと手をあげるのだけれど、右手は耳の高さくらいまでしかあがっていなかった。さて、話はもどって相撲である。天井からは「満員御礼」のたれ幕。土俵は黄金色に輝いて見えた。いろんな掛け声が飛んでいた。名を呼ぶだけでなく「キミは強い!」なんて声も。お相撲さん、立派だったねぇ。売店で力士の顔が印刷された力士クッキーを買って家に帰る道すがら、「オリンピック、どの競技でもいいからナマで見てみたいなぁ」なんて思っていたのだった。(イラストレーター)

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