3月26日 オトナになった女子たちへ 益田ミリ

朝日新聞2018年3月16日33面:選んだり、選ばれたり 差し入れを買いにチェコレートショップへ。店の奥にはカフェもあった。買い物を終え、ちょいとひとやすみ。「いらっしゃいませ、お好きな席にどうぞ」と、言われてから席を決めるまでの十数秒は、試されている時間でもある。キミはどこを選ぶのだ?
という店からの問い。あいている席の中から、最良と思われる席を見極めねばならない。正解はどこだ?! わたしの目は、灯台のあかりのように店内をぐるぐる。あっちの席は隣がカップルだし、奥の席はグループが盛り上がっているし。
いっそカウンターにする? でも、よく歩いたから足を床につけて休みたいし。わたしは入り口付近の席に腰掛けた。やや落ち着かないが、売り場の様子が見えるのは楽しい。わずかな時間で、割合、いい場所を選べた、という誇らしげな気分でホットチョコレートを注文。しかし、すぐにトイレの真横であることに気づくわけである。ああ、颯爽とトイレ横を選んでしまった・・。
選ぶことの難しさを思いつつ、一方で、選べないことの心配もしているのである。選べないことでの心配といえば、アレである。ときどき新聞でも見かける。美術館などで、何万人目かの来館者が、記念品をプレゼントされているお写真。わたしは、その「何万人目の人」になりたくなかった。照れくさいからである。
「どうか、何万人目ではありませんように」展覧会の入り口でそう願うこともなくはないが、そればっかりはどうにもできぬ。ニュースで、同じ展覧会に行った方が「何万人目の人」になっているのを見かけると、違う日でよかった~。 小さく安堵するのだった。
選んだり、選ばれたり(まだだけど)。日々、考えることは盛りだくさん。ちなみに「何万人目の人」に選ばれたときの喜び方についても、たまに考えている。先方にすれば、何日も前からセレモニーを準備しているはず。オトナである。もう、そのときは、満面の笑みでくす玉のひもを引っ張るつもり。 (イラストレーター)

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