3月25日 危機の統計「3」

朝日新聞2019年3月20日6面:予算・職員削減 業務に影響も 財務省幹部の一人は主計局に在籍していたとき、ある省の予算担当課の職員にこう言われたのを覚えている。「統計を切って下さい」予算案をめぐる折衝で、財務省がその省の予算を削るよう求めた時のことだ。幹部は「それはダメです」と断ったというが、「統計部門は省内で弱い立場にある」と実感した。国の統計をめぐる不正やほころびが相次いで発覚する背景に、小泉政権の総人件費削減など行政改革の大波の中で、統計部門の人員が大きく削減されてきたことを指摘する声がある。「職員の減少・高齢化が課題」「ベテラン職員が辞めていく一方で、育成対象者も減っている」ー。2017年、政府の「統計改革推進会議」の関連会議で示された各省庁への聞き取り結果の資料には、統計担当者の悲痛な訴えがつづられていた。
18年の国の統計職員は1940人で、09年の3916人からほぼ半減。厚生労働省では16年に「統計情報部」が廃止され、単独の部署ではなく、政策統括官のもとに収められた。「予算や役所の定員管理が厳しくなる中で、統計部門は削られやすい」。同省の統計部門経験者は話す。17年5月に統計改革推進会議が出した結論は「統計に関する官民のコストを3年間で2割削減する」。さらなる効率化を求める内容だった。こうした人員減が実務に影響している役所もある。農林水産省は、農家の所得などを調べるのに強うな農業経営統計の16年のデータの一部を17年7月に公表する予定だったのに、12月にずれ込んだ。約5ヵ月も公表が遅れる事態は、2005年公表分から恒常化している。農水省幹部は「統計部門の大幅な人員削減が原因の一つになっている」と話す。経済統計学会(会長=金子治平・神戸大教授)は2月、総務省の統計委員会に提出した声明で、こう指摘している。「今回の統計不正が統計職員並びに統計予算の削減を一因としていることは想像に難しくない」
企画と分断 実務「丸投げ」 統計部門の「体質」を指摘する声もある。昇進差別を受けたとして国に窓外倍賞を求める訴えを起こした厚生労働省の50代の現役係長。訴えは退けられたが、訴訟を通じ、統計部門特有の人事制度の一部を明かした。裁判資料などによると、係長は1980年、国家公務員2種(現一般職)で入省。以来、統計専門職を意味する「統計籍」職員として働いてきた。係長によると、統計部門の幹部や調査手法を設計する「企画調整係」は移動が頻繁にあり、調査は実務を「単純な事務仕事」とみて統計籍に丸投げしがちだという。厚労省の元キャリア官僚も、キャリアとノンキャリアとの「格差」があるとして、「統計部門は軽んじられ、ノンキャリアにやらせておけばいい、というひどい階級社会だ」と認める。
係長は、こうした体質が調査手法の設計と実務の間で分断を招き、不正の放置につながった可能性を指摘。「本来なら実務経験も積み、統計を熟知した職員が職場の運営に携わるべきだ」と訴える。統計不正問題を調べた厚労省の特別監査委員会は追加報告書で、幹部職員らの「統計に対する無関心」を指摘した。だが、係長が指摘するような組織の体質まで踏み込んだ形跡はない。係長はヒアリングを受け手いないという。逆に、キャリアが統計に実務を不審に思ったとしても、統計籍の職員に口を出すのは難しいケースもあるという。厚労所の元統計担当幹部は語る。「実務に精通するノンキャリアの職員に『ちゃんとやっています』と言われたら、キャリアはそれ以上、何も言えない」 (太田成美、大日向寛文、志村亮)

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