3月24日 危機の統計「2」

朝日新聞2019年3月19日3面:調査員不足データ集め難航 進む高齢化学生に期待 蒸し暑さのなか、スーツ姿の立教大生36人が東京都豊島区内を歩き回っていた。高層マンションや雑居ビルを訪問し、表札を見て、企業や自営業者のようなら片っ端から呼び鈴を鳴らす。「忙しんだ」「なんで協力しなきゃいけないの」など、厳し声を浴びることもある。2016年6月、全国の全事業所に従業員や売り上げを聞く「経済センサス」の調査のひとコマだ。外国人が対応に出て言葉が通じないことも多く、オートロック式のマンションにある事務所では、建物に入ることすら難しい場所があった。統計調査員の不足や高齢化に悩む都が、経済統計を学ぶ学生がいる立教大に協力を依頼。大学側も学生が現場を知る機会になると応じた。学生は都が雇う非常勤の地方公務員となり、報酬もある。
総務所によると、自治体などに登録された調査員の年齢構成は、2917年度で61歳以上が全体の66.4%を占める。埼玉県の統計担当者は昨今の人手不足から「調査員の採用が難しくなっている」と話し、「60代が多くが、70、80代になってもやってくれるのか・・」と不安げだ。調査の説明をしたり、協力を求めて説得したりする必要もあり、言葉のうえで外国人に任せるのは難しい。そこで、総務省は「学生調査員の任用」を提言している。
実際、立教大生たちは50~100事業所を目安に割り振られた区域を一人で受け持ち、平均以上の回収率を記録した。調査員の確保は、統計の精度を上げるためにも必須だ。厚生労働所による不正調査が発覚した「毎月勤労統計」では、東京都内の調査対象約3620事業所に対し、調査員が訪問した場合の企業の回答率は87%(18年12月分)に上った。だが、郵送調査の対処企業では58%(同)にとどまった。大学生の調査を担当した桜本健・立教大准教授(経済統計学)は「統計は人間による作業が大半で、そこが大変なところだ。回答してくれない人を説得するプロセスは、どうしても自動化できない」と話す。都道府県の統計専任職員の確保も課題だ。国の定員合理化計画で削減が続き、統計法が制定された当時の1947年度には5030人いたが、2018年度には1671人まで減った。都道府県の統計事業予算も、1999年の2019億円から右肩下がりで2017年度は552億円だった。さらに、18年4月現在の統計専任職員の統計事務の経験年数をみると、2年未満が49.5%とほぼ半数で、5年以上は16.3%にとどまり、ベテランが少ない。統計に携わる職員の8割は選挙事務などの統計以外の仕事も兼務しており、岐阜県美濃牛市の職員は「通常業務に上乗せされいている」と話す。
目的外使用懸念も壁に 人々の意識の変化が調査をはばむ場合もある。元東京都統計部長の早川智さんは「個人情報保護法の制定、ビッグデータ全盛の時代でもあり、答えた情報が目的外のことに流用されないかとの意識が高まっている。何度『秘密は保持します』と説明しても調査を断られることが多かった」と振り返る。東京都の担当者も「事務所に残業代や人件費を聞くと、労働基準監督署や税務署に流れるのではないかという懸念が強い」と話す。調査員の高齢化や人員不足などを踏まえ、桜本准教授は「今後は回収率の低下を前提に、より厳選したデータを組み合わせ、より精度の高いデータに加工していくことを考える時代だ。それが国際的な流れでもある」と話す。(別宮潤一、太田成美、西村奈緒美)

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