3月20日「ジャポニスム」をたどって「2」

朝日新聞2019年3月16日夕刊2面:交流の土壌に舞台の華 日本文化をフランスで紹介した大規模イベント「ジャポニスム2018」は、演劇にも力を入れた。劇場の確保、人の移動、舞台装置の輸送、翻訳や字幕制作など手間もなお金もかかる海外公演を強く後押しし、古典から「2.5次元ミュージカル」まで、多彩な演目が上演された。現代演劇では、定評のある蜷川幸雄、野田秀樹、宮城聴ととにも、次世代に光を当てた。企画・実施を担う国際交流基金は、東京芸術劇場などと協力して候補を挙げ、パリの劇場と協議。タニノクロウ、松井周、岡田利規、藤田貴大、岩井秀人らの作品上演が決まった。リアルなせりふ劇や女性の作り手が入っていないなど空白の部分もあるが、最前線ができ、公演は、どれも盛況だった。蓄積も生きた。作り手の多くは、パリ日本文化会館で講演経験がある。その時の評価は、公演を共に主催する現地の劇場の信頼につながった。演目の大半が、発信力の強いパリの芸術祭「フェスティバル・ドートンヌ」に参加できたものも追い風だった。芸術監督マリー・コランは「日本演劇との付き合いは長く、伝統と革新性、現代社会を映す姿勢に注目してきた。私たちは多様な他者の文化を受け入れ、広げてゆく」と語る。日本と20年来の交流がある国立演劇センター・ジュヌビリエ劇場の芸術監督ダニエル・ジャンヌトーは、共同制作を発案。岩井構成・演出「ワレワレのモロモロ ジュヌビリエ偏」が実現した。
しめくくりは2月、国立コリーヌ劇場での村上春樹原作「海辺のカフカ」だった。2016年に世を去った蜷川の演出に、寺島しのぶ、岡本健一、木場勝己らの演出が再び命を吹きこんだ。740席の劇場での8公演は超満員。連日50人以上がキャンセル待ちの列を作った。23日の千秋楽には、公開の場にめったに現れない村上のトークイベントが催された。村上は冒頭、英語で「この芝居と亡き蜷川さんとの素晴らしい思い出とともにここにいるのは大きな名誉であり、喜び。革新的で思慮深い演出を称賛します」とあいさつ。
あとは日本語で、劇場が選んだ15~21歳の学生5人の質問に答える形で90分、小説の書き方、政治と文学、戦争への考えなどを率直に語った。劇場の芸術監督のワジディ・ムワワドとともに準備をしてきた学生が「主人公はなぜ、死んだ女性を愛するのか」と小説の意味を問う。村上は答える。「僕は、失われるもの、消えるものに共感を持っている。日本の物語では滅んでゆくものへの共感に大事な価値があります。(こう考えるのは)日本的なものかもしれないけれど」「日本では、こちら(現実)の世界とあちら(死)の世界はくっついているんです。西洋では分かれているけれど、日本の文化では簡単に行き来できる」分析的に作品に迫る学生らに、村上はそれとは異なる世界の見方を示す。親密で刺激的な時間が流れた。 =敬称略 (山口宏子)

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