3月19日 昨夏の電力余力 震災前の原発分上回る

東京新聞2018年3月8日1面:再生エネ拡大と節電で本紙試算 年間を通じて最も電力が必要になる夏の発電状況について、電力の供給余力が昨年、東日本大震災前の2010年を大幅に上回っていたことが明らかになった。再生可能エネルギーが過去最大まで拡大したほか節電が進み、震災前に稼働していた原発の合計分を大きく上回る電力の余裕が生まれたため。東京電力管内では厳寒となった今年1月下旬も、大手電力間で電力を融通し合う仕組みなどで電力不足を回避した。
政府と電力業界は原発再稼働を急ぐが、原発がなくても十分な余力があることが裏付けられた形だ。電力業界の組織「電力広域的運営推進機関」の数値をもとに本紙が計算した。電力の余裕は実際の電力消費に対し、供給余力がどの程度あるかを表す「予備率」で示される。例年、冷房で電力が使われる夏に最も低くなる。3%を下回ると停電懸念が生じるとされるが、17年夏は最大需要時でも供給余力が2千100万キロワットあり、1億5500万キロワットの需要に対する予備率は約14%と、震災前の約9%を大きく上回った。予備率は16年も約13%あり、供給に大きな余裕がある状況は定着した。
背景にあるのはまず再生エネの拡大。再生エネは震災前までは地熱発電の30万キロワットだけだったが、昨年は太陽光を中心に約2千万キロワットに増加。これは原発20基分(1基100万キロワットとして計算)に相当する。需要についても夏の最大使用電力は節電の定着で震災前の10年に比べて2千400万キロワット減っている。再生エネと節電合計で、原発44基分にあたる4千4400万キロワットの余力をつくり出した計算。
これは10年当時稼働していた全ての原発が生み出した3400万キロワットを1千万キロワット近く上回る。震災後、電力を融通し合うルールが進んだことも余裕を生んでいる。今年1月は厳しい寒さで暖房利用が急増。このため震災後に発足した電力広域的運営推進機関を通じ東北電力などが余剰電気を首都圏に供給、東電はさらに事前に契約している企業に電力利用を抑えてもらう「ネガワット(節電)取引」も初めて使い、問題なく乗り切った。
原発必要論 根拠失う 「解説」福島原発事故から7年がたとうとする中、電力の供給余裕が震災前の水準を超えて拡大、「電力を安く安定的に供給するには原発が必要」としてきた安倍政権や経済産業省の主張は根拠を失っている。経産省は、国の電力政策の根幹となる「エネルギー基本計画」で、2030年に必要な電力の20~22%を原発でまかなう方針。電力に余裕がある今も「再生エネは天候に左右され不安定」(経産省幹部)として原発再稼働を急ぐ。しかし、今年1月に死去した九州大学院の吉岡斉教授は「原発こそ電力が不安定になる原因」と指摘していた。発電量が大きすぎ急に止まると穴を埋められないからだ。実際、東日本大震災時だけでなく、中越沖地震のあった07年にも東京電力の柏崎刈派羽原発(新潟県)が停止し、首都圏は電力不足に陥った。
原発が「安い」という根拠も乏しくなっている。海外では再生エネを安定して利用する技術の開発が進み、発電費用も下がり続ける。一方で原発のコストは放射性廃棄物の処理などがどこまで膨らむか先行きが見えない。政府は「福島のような事故は4千年に1回」との前提で事故処理費を軽く見積もるが、根拠は薄い。政府が原発に固執するほど、「安く安定した電力」から懸け離れていく構図になっている。(吉田通夫)

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