3月19日 オトナのなった女子たちへ 伊藤理佐

朝日新聞2018年3月8日33面:「衣類裁断」縛り 台所の「二十四葵節気・七十二候 歳時記カレンダー」を見る時は、ぜんぜん緊張しない。「わあ、来週は『桃始笑』→『ももはじめわらう』だって♡」 今月もカワイイ~ なんて、思う。そのあと、6畳間に吊るしてある「日めくりカレンダー」を、めくりにいく。少しだけ緊張する。それは、「衣類裁断、あるかな」で、ある。「衣類裁断」とは。この「衣類裁断」、日にちのデカイ数字の下に、旧暦とか、大安仏滅とか、格言ぽいヤツ、と一緒に並んでいる「行い」のコーナー‥というのか「婚礼に吉」とか「神事、仏事に凶」とか「遠出に吉」などの中に、いる。しょっちゅういる。
1週間に1回は登場する。去年のめくりは「衣類裁断」に熱心ではなかった。ヨシダサンが近所の本屋さんで買っていた日めくりが、本屋さんがつぶれてしまって、ネットで買ったらメーカーがかわったのだ。本日も「衣類裁断」が、いらっしゃった。 「衣類裁断は大凶」だ、大凶。なんで大凶なのかぜんぜんわからない。でも、今日は決して衣類裁断はするまい、と思う。「衣類裁断」が出た日は、ヨシダサンに報告することにしている。
「本日、大凶です」 うへ~決して裁断するまい、と同じことを言っている。今まで「衣類裁断に大吉」「衣類裁断は厄あり」「衣類裁断は寿命を増す」「衣類裁断すれば火難に遭う」 などがあった。うちの衣類裁断は、古くなったタオルやシャツを掃除用に小さくするだけだけど、どうせなら「寿命を増」したーい、と「良日」に、せっせと裁断している。
出会ってしまったのだ。「好きな日に衣類裁断できない苦しみ」に。しかし、この苦しみ、なぜだか気持ちいい。「今日ダメ」って言われるのって、いい。喜んで裁断していない。自分が「衣類裁断」縛りが好きなだけなんて、知らなかった。そして前より衣類裁断が好きだ。不思議だ。今日も少し緊張してめくっている。
(漫画家)

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