3月16日てんでんこ 新聞舗の春「10」

朝日新聞2018年3月6日3面:「いまは不安でいっぱい」。配達員も集まらず、妻も働けない。 「今は不安でいっぱいです」昨年12月、福島県浪江町の新聞販売所「鈴木新聞舗」の作業場で、鈴木恵(29)は、7月に生まれたばかりの長女、琴葉を抱き、そう言った。娘の名は、葉脈のようにたくさんの人とつながってほしいと、夫の裕治郎(34)が命名した。恵は2014年、福島県郡山市の除染関連の事務所で働いていた時に裕次郎と知り合い、翌15年に結婚した。1年後の16年11月、「浪江町で新聞販売所を再開したい」と告げられたとき、実感が持てなかった。
避難指示が出ていた浪江町を訪れたこともなければ、新聞を読んだ経験もあまりない。放射性物質が降り注ぎ、スーパー―も病院もない町で、果たして生活ができるのだろうか。夫婦は昨年1月、それまで暮らしていた郡山市から、浪江町と隣接する南相馬市のアパートへと移り、そこから裕次郎が新聞舗に通って、新聞配達の業務を始めた。恵の最大の心配は、月に1日しか休めない夫の体調と、それがきっかけで起こるかもしれない事故。「私が配達を手伝えればいいのだけど」と言うが、現実的には難しい。子どもを預けることができないのだ。
福島県内では今、待機児童が大きな問題になっている。保育所などに入れない子の数は東日本大震災翌年の12年の55人から、昨年4月には過去最高の616人に増えた。南相馬市でも前年より25人多い90人。原発や復興関連などで高額の求人が多くなり、共働きを望む親が増えて保育の需要も多い。裕次郎は昨年12月、浪江町に今春「こども園」が開園すると聞き、役場に電話をかけた。ところが、返ってきた答えは「0歳児は保育士がいないので受け入れられません」。
「役場のポスターには『園児募集』って書いてあるのに。役場は浪江に住民が戻れるように、もう少し頑張って欲しいなあ」配達員も集まらず、妻も働けない。配達部数は85部で頭打ち。経営的にも、体力的にも追い込まれていった。そんななか、昨年10月、裕次郎に、担当地域を変えて新聞販売所を経営してみてはどうか、という提案が持ち込まれた。(三浦英之)

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