3月14日 サザエさんをさがして 童話

朝日新聞2019年3月9日be3面:春に誘う子どもの世界 タラちゃん、ワカメちゃんと歌いながら歩くマスオさん。みなさんは、2コマ目の絵が示す歌は何だと思いますか? 苦肉の策のこの書き出し。春の訪れを感じる楽しい漫画を選んでテーマを「童話」にしたが、絵が示すのが何の歌かは分からない。どうしよう。入り口からつまずいた。そこで、近著に『童話の百年』(筑摩選書)がある立教大社会学)に助けを求めた。1コマ目は「春が来た」だろう。2コマ目は絵から読み解くしかないが、ワカメちゃんが歌っているのは「靴が鳴る」のようだ。難しいタラちゃんの歌だ。小鳥の歌はいくつかあるが、有名なのは「赤い鳥小鳥」か「ことりのうた」だろうか。井手口さんは「歌のジャンルの混同が起きているのが面白い」と言う。
「童話」は、大正時代に児童文学雑誌「赤い鳥」が創刊し、童謡創作運動を始めたことで数多く生まれた。それは、日本国民をつくるために学校で教えられていた唱歌を批判する形で始まったのだという。漫画に出てくる「春が来た」は唱歌、「靴が鳴る」と「赤い鳥小鳥」は戦前童謡、「ことりのうた」は戦後童謡。同じ場面でごちゃまぜになって歌われている唱歌と童謡は、そのまま日常生活に浸透していたようだ。井手口さんは、マスオさんが「童心にかえった」と言った点にも着目する。「童心」は童謡の重要なキーワード。ただマスオさんにとってその世界は遠く、春の花からつやっぽい美女を連想したようだ。
今では子どもも流行歌を歌うが、1960年代半ばごろまでは、歌をめぐって大人の世界と子どもの世界の「断絶」があったという。子どもが流行歌を歌うことは良くないこととされ、美空ひばりが登場した時も激しい批判が起きたそうだ。マスオさんは子どもと一緒にいるから童謡を歌うが、やはりうまく「壁」を乗り越えられず、4コマ目の「というわけには いかんわぃ・・」という言葉につながっていく。さらに、「親子が外を歩きながら歌っているのも面白い」と井手口さんは言う。この時代はまだ、日常生活の中で童謡が歌われていたのが見て取れるからだ。現代はどうだろうか。童謡や子守歌などを伝える「親子のつどい」(東京)を主宰する鈴木美和子さん(62)は十数年前、夕方に外で「夕焼小焼」のメロディーが流れたとき、親戚の子から「知らない」と言われて驚いた。それを機に童謡の会を作ると、入会するのは70~80代が中心だった。
「子育て世代は童謡の魅力を知らないだけ」と鈴木さんは言う。子育て支援イベントで定期的に童謡を披露していると、赤ちゃんを抱いた母親から「子守歌でホントに寝ました!」とうれしそうに報告されたことも。「童謡を口ずさめるようになると子育てが楽になると思う。ママにもパパにも歌ってほしい」と話す。戦後の子どもの歌は「童謡」と呼ばれないことが多い。井手口さんは「現代の子ども向けの歌にも良い歌がある。注目されないのはもったいない」と話す。祖父母世代が童謡を伝え、子育て世代や子どもたちが現代の歌を教え、互いに教え合うことで一緒に歌える場面が増えたら楽しいのではないかーと想像した。(見市紀世子)
写真「かなりや」を歌う、童謡歌手として人気を博した川田孝子さんと児童合唱団の子どもたち=1966年、東京・上野公園

 

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