3月13日てんでんこ 新聞舗の春「9」

朝日新聞2018年3月3日3面:いきなり苦境にたたされた。7月、娘が生まれた。 昨年3月31日、福島県浪江町の中心文は避難指示が解除された。新聞販売所「鈴木新聞舗」は営業を再開したものの、いきなり苦境にたたされた。所長の鈴木裕次郎(34)は当初、約1千人が戻ってくると見積もっていた。だが4月、実際に戻ってきたのは193人。新聞舗は同月、40部しか契約を結べなかった。配達員も、1人も雇えなかった。
かつての従業員約30人に電話をかけたが、町に戻ってこられないか、別の仕事に就いていると言われ、断られた。時給1500円で求人を出しても、応募者ゼロだった。配達員を1人でも雇えば、配達を1日置きに交代できる。あいさつ回りや集金があっても週に1日は休暇が取れる。事故やパンクが起きても、互いに救援に駆けつけられる。でも、今の浪江町ではそれが難しい。
福島労働局によると、浪江町を含む福島県双葉郡の有効求人倍率は、昨年4~11月で6.6倍。震災前の0.63倍に比べ、約10倍に跳ね上がっている。新規求人の平均賃金も、同時期で36.9%上昇。ハローワークには原発や復興関連の高収入の求人が並ぶ。裕次郎はたった1人で配達を続けた。友人と語り合いたくても、飲酒運転になるので夕方以降は酒も飲めない。どんなに体調が悪くても、午前2時にはハンドルを握った。
楽しみは、町が広報誌などで公表する町内居住人口を毎月チェックすることだ。4月末には193人だったその数は、5月末には234人、6月末には264人と、わずかだが毎月増えていった。しかし、その数字は実際の居住者数と一致していないことも知っていた。昼間、集金やあいさつ回りをしていると、帰還しているはずの人に会えなかったり、いつも駐車場に車がなかったり。「居住者」として届け出ながら、昼間だけ町内の畑や役所で働き、夜や週末になると近隣市の「自宅」に帰ってしまう人が、少なからずいるのだ。それでも、その不確かな数がわずかに増加していることが、町が確実に前進しているように思えてうれしかった。いつの日か、にぎわいを取り戻した町の姿を見せてあげたい。7月、裕次郎に第1子となる娘が生まれた。 (三浦英之)

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